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第35話◇

「あ、じゃあ先輩の秘密――――……」 「え?」 「先輩の秘密、教えてくださいって言ったら?」 「えー……それはちょっと」  先輩がちょっと困った顔で、眉を寄せた。 「あ、無理にとは言いませんけど」  すぐ退くあたり、オレ、ほんとに弱いな。  自分に苦笑いしてしまいつつ。  なんかちょっと可愛いけど……。  なんて、頭おかしいような事を思いながら、先輩の、ちょっと困った顔を眺めてると。 「……オレの秘密って、悩み相談みたいになっちゃうし」  そんな事を言い出した。  悩んでるってこと?   ……その秘密で?  何だろう。  ますます、気になる。 「――――……オレ、すっげえ気になるんですけど」 「……そうだよね。ここまで言って話さないのもなあ……でもなあ……」 「やっぱり嫌ですか?」 「嫌っつーか。……聞いた三上が困るかもって思って」  ……さっぱりわかんねえ。  こういうのかなっていう予想もつかない。  でも、何にしても。 「別に先輩が悩んでる事聞いても、オレは困らないと思うんですけど……」 「……返答に困るんじゃないかなーって」 「……もう言っちゃいませんか? イイですよ、相談、乗りますよ」 「えー……うーん……」  どうしようかなー、なんて言いながら、先輩は苦笑い。 「オレ総長ん時、結構色んな相談乗ってましたし。今も後輩たち、愚痴ってくるし。大概のこと、驚かないと思うんですけど」  話しやすくなるかな、と思って、そう言うと。  まあ事実だから、多分、恋愛相談から始まり、家の事やら進路まで、かなり色々話しは聞いてきたし。 「ふーん……そっかー。まあいっか……じゃあ相談、乗って」 「はい」 「――――……オレさ」  言い出した先輩に、邪魔しないように、声は出さずに頷いた。 「あ。誰にも秘密だぞ?」 「……言わないですよ」  がく。  もうくると 思ったのに、再度そこ確認か。 どんだけだ。 「そんなに言いたくなかったら、聞かなくてもいいですよ?」 「ここまで来たら言うって。ごめん」  先輩、苦笑いしてる。  ほんとに聞いていいのかなと思ったら。 「なんかさー、オレさ、最近合コンとか行くと、すっげえ、モテるんだけどさ」 「――――……はぁ……」  モテるのが、悩み??  ……まあ、モテるだろうけど。 「どうモテるんですか?」 「さっきも言ったけどさ。合コンとかいくとさ、連絡先渡されたり、聞かれたり――――……何日かしてから、全然知らない女の子から、知り合い経由でいきなり連絡が来たりしてさー……一回いくと、後々まで、すごいんだよね……」  とっても嫌そうなので、自慢ではないらしい。  それが悩み?? 「……まあ、モテるのは分かりますけど。あ、でも」 「ん?」 「誰か特定の1人、持ち帰ったりとかしないんですか? それがあれば、複数から来る事は無いんじゃないですか?」  オレは大体そうだな。  ……まあ。ほとんど一夜限りのお楽しみ、て感じだけど。 「――――……こっからが悩みなんだけどさ」 「あ、はい」  ここからなのか。 「……なんか、迫られ過ぎたせいなのか、なんなのかよく分かんないんだけどさ」 「はい」 「なんか、最近、ほんっとにそーいう気分にならなくてさ」 「――――……」 「……困ってるんだよな」 「――――……えーーっと……?」 「ん?」 「……たたないっつー事ですか?」 「いや? たつよ?」  あんまりな質問かと思ったけど、けろっとして、普通に答える先輩。 「――――……」  たつのか。  ……まあ当たり前か。綺麗でも男たもんな。  ていうか。  この人、女と、どういう顔してするんだろ。 「気分だよ、気分。 全然その気になんねーの」 「――――……疲れてるんじゃないですか??」  それ位しか、浮かばない。 「まあ、そうならいいんだけど」  先輩、頬杖をついて、ため息。 「でももう3年近くだよ? やばくない?オレ」  んー。ヤバい。かな。3年って結構長い。 「別にできるんだけどさあ。そうなってからも、何回かはしてるけど。全然盛り上がらないし。終わってからも、疲れたななーてだけでさー」 「――――……」  こてん、とテーブルに突っ伏してしまった。  してるのか。まあ。そりゃそうか。    でもなんか。  先輩と、そういう行為が、なんかあんまり結びつかない。  あんまりというか、全然。  さっきから変にドキドキしてたけど。  それはただオレがやましいだけで。  ――――……潔癖な、綺麗なイメジで。 「あれ。先輩、寝てます?」 「起きてるよ……」  むにゃむにゃしてる。  ……何でこんなに無駄に可愛いのか、  可愛く見えるオレが頭おかしいのか。

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