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第36話◇
「……三上はそういうの、強そうだよね」
「ん?……何ですか? 強そう?」
「そーいう、やる気……」
「やる気って……変な言い方しないでくださいよ」
何だそれ。
苦笑いしてると。
テーブルにくったりしながら、先輩がオレを見つめてくる。
「……キスしたいなーとかも、昔は思ったのにさ」
「……思わないんですか?」
「うん。思わないんだよね」
「んー……」
「ああ、別に出来るんだけどさ」
聞いても、返事に困るって言ってたけど。
確かに何と言ったらいいか、分からない。
相手がいないとかなら紹介するとかあるけど。
モテるのにしたくないとか。
――――……うーん。
「……まあ。言っても仕方ないんだけどさ」
「確かに……そうですね。したくないんですもんね……」
「そうなんだよね。――――……でも、なんか枯れてるみたいで、やだ。オレまだ若いのに……」
「そうですね……って、先輩今いくつですか?」
「27……」
「……まあ、若い、ですよね」
「何。若くないと思ってる?」
何も言ってないのに、きっと睨んでくる。
「オレ何も言ってませんけど」
苦笑いで答えると、はー、とためいき。
「……三上ー」
「はい?」
「……眠い」
「――――……でしょうね」
ぷ、と笑ってしまう。
やっぱ、可愛い。
酔ってると、ほんと、可愛い。
普段の先輩は、可愛いってよりは、綺麗だし。ていうか、普通の人は、カッコいいと思うんだろうけど。
くてん、と柔らかい感じになってて、顔、とろんとしてて。
可愛いな。
あーもう、ダメだな。オレ。
――――……本当に、この人が好きみたい。
「先輩、歯、磨いて寝たら?」
「うん。……そーする」
立ち上がって、洗面台の方に消えていった。
――――……オレもみがこ。
少ししてついて行って、歯磨きをしてる先輩の前から歯磨きを取って、水に濡らす。
先に磨き終えた先輩が、先布団にいってるねーと、言いながらふらふら歩いていく。
磨き終えて、トイレを済ませて部屋に戻る。
「先輩、電気消します?」
「うんー……」
そんな声が聞こえたので、一番大きな電気を消して、端の小さな電気だけ残した。
布団の部屋に行くと、先輩が、布団に入らず、掛布団の上で俯せに倒れていた。
「先輩……布団入ったら?」
「うん、あとで……」
「このまま寝ちゃいそうですけど……」
「んー……」
絶対寝るだろ、これ。
隣の布団に座って、倒れてる先輩を眺める。
「――――……」
浴衣って。
――――……マジでエロい。気がする。
もったいないなー。
そういう魅力、すげえあるのに。
オレのやましい想いは置いておくとして、女だって、この人に誘われたら、全然オッケイだろうに。断る女なんて、居るか?
――――……キスもしたくないとか。
そう言う気にならない、とか。なんか、もったいない。
疲れてんのかな?
言っても仕方ないとか言いつつ、言ったってことは、やっぱり気にしてるんだよな。でも、機能が落ちてるとかならわかるけど、欲が無いって。どうにもできないんじゃねえ?
――――……まあきっと、結構酔ってるから言えたんだろうけど。
この人、明日になったら、これ話したの、覚えてんのかな……。
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