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第44話◇翌朝

「――――……み……三上?」  名前、呼ぶ声がする。 「ん――――……」  ……誰。思って目を開けて、見慣れない天井。……どこ。  思った瞬間、全部思い出して、がば、と起き上がった。  オレの布団の隣に、びっくりした顔の、先輩。 「あ。――――……おはようございます……」 「お、はよ……」  ――――……先輩の、顔。  昨日のこと、どう、思ってるのか。顔見ただけじゃ、よく分からない。  怒ってる感じじゃなさそうだけど……。 「……あの、三上、昨日」 「……はい」 「――――……ご、めん。とんでもないこと、させて」 「――――……」  ――――……おー……。そう、来たか。  謝るのか。 「とんでもないこと、って?」 「え?」  そう聞いてみたら、先輩、すごく、びっくりした顔。 「とんでもないことって、何ですか?」 「……覚えて、ないの?」  内容聞いてみようとしたら、違う方向で勘違いされた。  拍子抜けしたような顔をしてる先輩に。  ぷ、と笑ってしまう。 「覚えてますよ。――――……どれが、とんでもないことなのかなって、聞いただけですよ」 「……っ全部」 「どこから?」 「……キス、から後の、全部……」  そんな真っ赤な顔して。  俯きがちに、言われると。  朝っぱらから、ものすごいムラムラしてくる。  ……何でこんな、可愛いんだろう。  とは、思うのだが。  オレが、腕を上げて、自分の前髪を掻き上げようとした瞬間。  先輩が、大きく、びくっと震えた。 「――――……」  うわー……。  めっちゃ、びくついてるなー……。  どういう意味でこうなってるんだろ。 「……ほんと、ごめん。 酔ってた……とは言っても覚えてる程度だけど…… でもちょっと酔ってて、なんか、お前が言ってくれたのに完全に甘えちゃって……ほんと、すごいことさせて。 ……どうしたら、良い?」 「……どうしたらいいも何も……どうしたらって何ですか?」 「だって……嫌だったろ?」  ――――……この人を漫画に描いたら、もう、汗が全身から飛び散ってるみたいな絵になる、絶対。  ……大体わかった。  先輩は、酔った先輩に、オレが、嫌々付き合ってあげた、みたいに思ってるみたいで。オレが嫌だっただろうから、怒ってるか嫌がってるか。どうしたら許してくれる?とか、聞いてる感じ、なんだろうと。  昨日のを覚えてるなら、どう考えたって、オレがノリノリで、恥ずかしがる先輩に好きに色々した、っていうのが正しいと思うんだけど。  ……謝っちゃう訳かー……。  うーん。  難しい。  むしろ、オレが怒られるかなって、思ってたのに。  なんか、目の前で、固くなってる先輩が、  朝から、可愛い。

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