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第46話◇

 2人浴衣のまま、朝食に向かう。  テーブル席に並んだ朝食が、朝から豪華。 「美味しそうですね」 「うん」  ――――……先輩、口数、少ない。  やっぱりちょっと怒ってんのかな。  昨日みたいに酔ってる時じゃなくて、さっきみたいなシラフの時に、キスしたいとか言っちゃったしな。……失敗だったかな。  なんかびくついてたし、赤くなってるし、  すごく可愛くて、思わず言ってしまったけど。  言わなきゃよかったかもなあ……。  食事はすごく美味しいが。  先輩の笑顔が無いから、何とも、困る、というか。 「……三上」 「あ、はい?」  急に呼ばれて、顔を上げると。  先輩は、オレを見つめて、ちょっと困ったように、むっとした口で。 「――――……お前、ほんとに、後悔してない?」 「してないですよ」  即答すると。先輩は、またちょっと困った感じでオレを見てたけど。 「……なんか、三上って」 「はい?」 「……ブレないっつーか……男っぽいっつーか……」 「――――……そうですか?」  どういう意味?? 「……お前、迷うとか、ないの?」 「――――……迷う?」  つか、ものすごい、迷いまくりだけど。  していいのか、止めた方がいいのか、どこまでオッケイかとか、昨日、散々迷いながらしてたけど。  ていうか、今だって、キスしたいとか言わなきゃよかったかなとか、色々考えてたけど。 「――――……めちゃくちゃ色々、迷ってるんですけど」 「そうかなあ……?」 「まあでも、昨夜した事は後悔してないですし。今もしたいっていうのは……本当ですけど。 でも、先輩が嫌なら、2度としませんよ」 「――――……ほら。すっげー割り切るっていうか。迷い、無いじゃん」 「――――……」  んな事言われても。それ以外、言える事は無いというか。  後悔してると思われるのも嫌だし。  無理言って困らせるのも、嫌だし。  無理言ったら、今後の仕事にまで響くじゃんか。  ……オレが今言ったのは、もはやそれしか、言えないっていう類の言葉なんだけどな……。 「――――……」  先輩がものすごい眉を寄せたまま、食事を続けて、黙ってる。  なんかものすごく、考えてるっぽいので、何も言わないでひたすら待ちながら、オレも食事を続けていると。 「……嫌じゃなくても……考えなきゃいけない事たくさんあるし」 「――――……」 「……なんか、三上みたいに、すっぱり割り切れないし」  考えなきゃ、いけないこと?  なんだろう。  男とか? 職場の後輩とか? 兄貴の弟って事とか?  ……あとなんだろう。  ――――……つか。  それよりも。 「今、先輩、嫌じゃなくてもって言いましたか?」 「え?」 「嫌じゃないって事ですか?」 「――――……えっ、と…………」  何も考えずに言ってたんだろうな。  突っ込まれて、自分のセリフを考えて。  言い訳できずに俯いて、また赤くなって、困ってる。  ………………なんか。ほんとに。  誰より可愛いって、思ってしまうんだけど。  ――――……嫌じゃないって。  どんな意味だったとしても、すげー嬉しいし。

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