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第59話◇side*陽斗 3

   三上の予約してくれた店に入ったら、テーブル席とかも空いてるのに、何故かカウンターで予約されてて。乾杯しようって言ってたら、そこで何故か急にテーブル席に移動。  ……三上って。なんかたまに不思議。  でも。  とりあえず、ちゃんと知り合おう記念で、乾杯できたし。  食事は、楽しかった。  三上の友達の店の話になって、今度三上と行きたいなーて言ったら、志樹と行くのか聞かれた。あ、暗にオレと行きたくないって事かなと思って退こうとしたら、ものすごい勢いで、一緒に行こうと言われて。  …………よく分かんないけど、一緒には行ってくれそう、かな。  オレも、辛い2年間だったけど。  オレには、そうする理由があって、意味が分かっていたから。まだ良かったと思う。  三上は、そうされてる理由を当然知らないから、きっと、すごく、嫌だったろうから。オレの事も、ほんと、嫌いだっただろうなと、思うから。  いくら理由があったって知って、理屈でオレを許そうと思ってくれたとしても、やっぱり、嫌だなって思ってた感情の方は、そう簡単には消えないだろうなあ……。  三上と色々話してる内に、なんかふと、そんな風に思って。  嫌いだったよね、オレの事……みたいな事を言ってしまった。  とか言ったって、直で嫌いだなんて言えないよな、嫌いじゃないですよ、とか言うかなー……三上いい奴だからな……そう言わせるのも悪い気がする……と色々思っていたら。  好きに決まってる、とか言ってくれて、ちょっとびっくり。  なんか、三上って、ほんと可愛いなと。  思ってしまった。  そういえば、志樹がよく、弟がって話してたから、オレの中でも、三上って、弟のイメージで出来上がってたんだよな。  ……普通に話してたら、やっぱり、なんか可愛く思えて。  これからは、今までの分も仲良くしながら、優しく指導しようと、心の中で決めたりしてた。  その後、一緒に買い物に行って、服をお互い選んだ。  三上に似合う服探して、オレのも探してもらって。  なんか、今まで、普通の会話すらしなかった反動もあるのか、  なんだかすごく楽しかった。  三上は、同期や他の先輩とは仲良くて、いつも楽しそうに話してて。  オレも話したいのに、とか。思ってたから、余計かも。  やっぱり直の指導の後輩と、仲良くしないとかありえないし。  オレよく2年間、耐えたな。とか思ってた。  そんな感じで、2年間の最悪態度の種明かしから始まって、木原さんの訪問と食事と買い物を済ませて、旅館に辿り着いた。  一緒にお風呂で裸の付き合いーとか思ったけど、何だか知らないけど、めっちゃ入ってくるの遅いし。  やっと入ってきて、一緒に月を見上げて、少し話して。  のぼせそうで先に出たら、なかなか出てこない三上が、のぼせてるし。  ぷぷ。三上、可愛いな。なんて思いながら介抱した。  木原さんのとこに居る時から、ずっとついていきます的な感じだったり、なんか、弟のイメージがすっかり定着。   ところが。そんな風に思っていたら。  突然、高校ん時は族の総長だった、とか聞いて。  正直、かなりびっくり。  総長って。  ……怖い暴走族の中で、一番偉い奴?  三上が??  お母さんが早くに亡くなったとか言ってたし、昔荒れてたのかな。  …………でも高校生、思春期か。  まあ、……別になくはないか。  偉い奴?て聞いたら、一番強い奴、と返ってきた。  おお。暴走族の中で一番強いって。  すごくない?  どんな感じだったんだろう。  今の三上は、スーツが似合う、普通に良い男だと思うけど。  どうしても写真見たくて、頼んだら、仲間に聞いてくれた。  来なかったら諦めてと言われたけど。  諦めるとか、絶対いやだ。すごい楽しみだし。  絶対送ってきて、超見たいから。と、近年稀に見るワクワク感。

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