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第60話◇side*陽斗 4

 その頃、段々酔いが回ってきてて、なんか少し眠いなーなんて思ってて。 「オレが態度悪くても、メンタル強いから平気って、志樹、言うよなー……族のリーダーかー……」  みたいな事を言ったら。 「嫌いだって思おうとしてたけど。そうもなりきれなくて、めっちゃ嫌、でしたからね」  と。言われてしまった。  メンタル強くても、嫌だった、と。  それはそうだよね、失言、オレ。ごめん、なんか酔ってきたな、あんまり余計な事言わないようにしないと。と思って、一瞬、反省したんだけど。  でもそっちより、なんか。  ふと、気づいた。  嫌いだと思おうとしたけど、なりきれなくて。  と言ってくれた方が、心に残ってしまった。  嫌いだと思おうとしたってのは、勿論、気になるけど。  ――――……嫌いになりきって、なかったんだ、オレの事。  そうなんだ……。ふーん……そーなんだ。 「はは。――――……三上、かーわいい……」  つい、そんな風に漏らしてしまった。  あ。可愛いとか。  24の、男に言う事じゃないか。  でももう言っちゃったし、良いか。  酔ってるオレは、かなり適当になってて。特にフォローもしなかった。  そうこう話してる内に、三上のスマホがピコピコ連続で鳴り始めた。  三上がそれを見て、うわー、という顔をしてるのが面白くて。  でも、内心、角材とか持ってたり、すごいリーゼントとか、金髪とか、もうんとに怖かったらどうしよう、とドキドキしながら、写真を見たら。  あ、なんか。   三上のまんまだなと、思った。  特攻服は着てたけど三上は割とそのまんまの感じ。セットしてない黒髪。今よりは少し前髪長い、かな。  ……まあ三上の周りにはすごい髪形と色の奴らもいっぱい居たけど。でも、皆すごい笑顔で。どの写真見ても、三上の周りに人が群がってるように見えるし。  なんかすごく楽しそうで。 写真見てる間にもどんどん送られてくるメッセージが通知欄で目に入ると、総長カッコいい、とか、大好きとか、そんな風なメッセージばかりだし。  まあ暴走族は暴走族だし、喧嘩とかはちょっとなあと、やった事ないオレとしては思ってしまうけど。  好かれてたんだろうなあというのはすごく分かる写真だった。  とりあえず、そんなに怖くなくて良かった、と、写真を見てちょっとホッとしたりもした。  こういう経験が、肝座ってるとか、器でかいとかに繋がってんのかなと思えば、なんか、こういうのもありなのかも、と思ったりしてしまった。  なんか――――……結構酔って、フワフワしたまま、色々話してる内に。  オレの悩みを知りたい、とか。色んな相談乗ってきたから聞きますよ、とか。色々言われて。  ……ついに話す事にしてしまった。  今まで誰にも言わずにきた、ちょっと何て返していいかわからないだろう、とんでもない相談を、よりによって、後輩に。  なんか三上は誰にも言わないでくれる気がして。  ――――……オレ、誰かに聞いてほしかったのかも。

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