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第71話◇都合よく。

 午前中、人力車に乗ったり寺院を回ったり、かなり色々満喫してから、通りがかりの豆腐料理の店に入った。 「なんか昨日湯葉で、今日豆腐とかって」 「健康的ですよね」  クスクス笑いながら、メニューを眺める。  美味そう。  ――――……あれからずっと、楽しいし。  注文して、食事を待ってる間、撮ってた写真を見ていたら。 「先輩、見てこれ、良い写真」 「どれ? ……わー、オレすっげえ笑ってるし」 「楽しそうで良いでしょ」  人力車がめちゃくちゃ楽しかったらしく、先に先輩が乗った所で撮った写真。すげえ良い笑顔。    ――――……ぷ。子供みたい。可愛い。 「オレはこれがいーなー。なんかこのままパンフレットとか載せれそう」 「どーゆー事です?」  先輩が自分のスマホで見ていた写真を、オレに見せてくる。 「――――……」  さっき、寺院で、像を見ている時の、オレの写真。  なんか、神妙な顔して、見入ってる。 「カッコよくない? この写真」 「そうですか?」  ……オレが立ってるだけなんだけど。 「寺院にパンフにのせてって頼みたい」 「何ですか、それ」  笑ってしまいながら、ふと気づく。 「先輩って、オレの顔、好きです?」 「え。あ、うん。 カッコイイよな? てか、嫌いな奴、居ないんじゃねえ?」 「――――……」  そこは照れずに、普通に言う。  ――――……一般論として、かな、今の?。  まあ。……嬉しいっちゃ嬉しいけど。 「……『好き?』とか聞くの、やめてくんない?」 「え」  一般論で返事をした後から、その部分を考えたのか、なんだかやたら照れだした。 「……熱いし」  ぱたぱた扇いで、そっぽ向いてる。  ちょこちょこ、やたら可愛いのは、ほんとに。  わざと可愛くしてる?? ……訳ねえか。  これ以上突っ込むと、まともに話せなくなる気がするので、それには返事しないで、写真を眺めていると。ちょっと落ち着いたらしい先輩が話しかけてきた。 「あのさ、午後さ」 「はい?」 「三上が行きたいとこ行こうよ」 「オレが行きたいとこですか? パンフ貸してください」 「うん」  渡されて、前からざっと見ていく。 「京都がいいです?」 「んー。でも寺っぽいのはもう何個も行ったし。もうどこでもいーよ?」 「――――……じゃあほんとにどこでもいいですか? 京都は明日、また帰る前に少し回ればイイですよね?」 「うん、いーよ」  とりあえず京都のパンフを先輩に返して、スマホで検索。 「ここは?」 「どこ?」  画面に出したのは、大阪にある、テーマパーク。 「え、行きたいの?」 「一回行ってみたかったんですけど。今からじゃ遅いですかね」 「良いよ、行こ行こ。オレも行ってみたい」  めちゃくちゃ楽しそうな顔で、先輩が笑う。 「いいよな、こういうとこってさ。オレ、ディズニーランドとかも、好きだったな。――――……社会人になってから行ってないけど」 「何でですか?」 「んー……? なんでだろ。忙しかったってのもあるし――――……昨日言ってた話も関係あるかなあ。 あんまり乗り気じゃないのに、そんなとこ行こうって気にもなんなかったし」  なるほど。 「三上は? 行くの?」 「彼女とかが行きたいって言えば、行ってましたね。嫌いじゃないんで。ああいう、日常じゃない空間」 「へえ。じゃあ、今度いく? ディズニーランド」 「――――……」  なんか。  ――――……すごく普通に、遊ぼうの誘い?  今から別のテーマパーク行こうって言ってるし。    ――――……今夜、色々しようって時に。  それが終わった後、オレらって、どうなんのかなあと、ちょっと心配してるのにな、オレ。  そんな時に、次のテーマパークも、一緒にいこ、とか。  ……可愛いよなあ。なんか。  先輩の、この好意っぽい言葉が。  さっき、「三上だから」「三上じゃなきゃ」て言ってくれた言葉と重なって。  どうしても、都合よく、聞こえてしまう。

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