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第73話◇少しだけ反撃?
店の中は混んでたので、外のテラス席みたいな所で食べる。
「美味しいよ。食べ途中でよければ、食べる? 三上」
はい、とクレープが差し出される。
一瞬、躊躇う。
別にディープキスしてるんだし、食べ途中なんて、正直どうでもいい。
でも。何せ、さっき、デートみたいとか言われたばかり。
何を思って言ってんのか、知らねーけど。
食べ物あーんとか。
カップルだって、しない方が多いんじゃねえのかな。
少なくともオレは、ほとんどそんなの、した事はない。
――――……っとに、もう。この人は。
何も考えてなさそうなのが、少しムカついて。
もう、差し出されたそのまま、ぱく、と食べてやることにした。
差し出すといっても、先輩はそこまで自分から離してなかったので、食べた瞬間すごく近距離になった。びっくりした顔してる先輩を、じ、と間近で見つめてみると。
「っ」
急に顔を引かれる。
「――――……どうかしました?」
「……べつ、に」
気づかない振りで聞いてみると、狼狽えたのを必死で誤魔化してる。
――――……ああやって、おかしな発言ぶちかますくせに、こうやって近づくと、それは照れるんだな。少し、顔、赤い。もんな。
――――……ふうん。
「照れる」のか。
「嫌がる」とか。じゃなくて。
「めちゃくちゃ、間接キスですけど。 そういうの、平気? 先輩」
「え。かんせつ――――……」
そこまで言って、固まって。かあっと赤くなる。
「ばばば、かじゃないの、三上。 一口、食べた、だけじゃん……」
「でもそうですよね?」
「……ち、がうし」
ぷい、とそっぽを向いてしまう。
あらぬ方向を見ながら、レモンのクレープをモグモグ食べてる先輩の横顔に。なんだかもう、苦笑いしか浮かばない。
間接キス位で。
そんな照れる?
先輩って、ほんと、純情?
エロい会話とか。絶対友達同士でもしないタイプだよな、きっと。
やらしい単語とか、言わないで生きてきたんだろうなあ。
まあ、男でも下ネタ系嫌がる奴は普通に居たし、別にオレも大好きって訳じゃねーけど、別に言われたからって、照れはしない。
しかもこの人は、自分は何も考えずにかましてくるくせに、言われると、そんなに照れるのか。
……ふーん。
――――……これは。
ちょっと。
――――……楽しいかもしれない。
…………にしても。
口の中のクリームがいつまでも消えない。
「甘っま……」
レモンクリームって。すっぱいのかと思いきや、
めちゃくちゃ甘い。
「先輩オレ、水貰ってきます。いります?」
「……いらない」
あ、なんか、態度。拗ねてるというのか。困ってるのかな。
よく分かんないけど、目、合わせねえし。
とりあえずそこには突っ込むのは後にして、早く口を流したくて、水を貰いに店の中に入った。
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