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第78話◇好きです
先輩のキスで衝動的に盛り上がった劣情が何とか収まってくると、今度は、何だかすごく嬉しくなってきてしまった。
他の人とキスとかしたくなくて。
そういう気持ちがわかなくて困るって、長い間、悩んでた人が。
オレとキスしたくて我慢できなくなったとか言って。
キス、してくれたんだよね。
それは、すごいコトな気がする。
「――――……先輩」
触れるだけのキスを、先輩の唇に重ねる。
先輩は、何も言わず、キスを受けて、それからじっとオレを見つめた。
「……あのさ。トイレなんかで何なんですけど……旅館まで言わないのは、ちょっと、間があきすぎちゃうので」
「ん……?」
「――――……オレ、先輩が好きです」
この状況。整理して伝えたくて、そう言ったら、先輩は、まっすぐな視線を返してきた。
「オレ、割とモテるし、そういう事に飢えてるからとかじゃなくて……先輩が好きだから、してます」
「――――……」
「……まだ昨日の今日しか、先輩と居ないし、どんな意味か、まだはっきりよく分かんないですけど。 ……ていうか、どんな意味でも、好きだと思います」
「――――……」
「……だから、先輩もオレをどう思ってるか、考えてもらっていいですか?」
「――――……」
「すぐに答えてくんなくていいですよ。――――……今夜の事は……その答えが出てなくても、先輩が嫌じゃなければ予定通りで。終わってから、その件も含めて、しばらく考えてくれてもいいです。とにかくオレは、先輩が好きで、好きだから、こう言う事も全部、してます、てことで……」
とりあえず全部、言いたいことは言った。
「……じゃ、そういう事で。――――……ここ出ましょうか」
「……」
「オレ先に出るんで、声掛けたら出てきてください」
先輩から視線を外してトイレから出ようとしたら。
「三上……」
ぐ、と腕を掴まれた。
まっすぐ、綺麗な瞳が、オレを見上げる。
「先輩……?」
じっと見つめ返すと。
「――――……オレも、お前のこと、好きだよ」
そのセリフに、驚く。
――――……こんなすぐに、こんな風に言ってくれるとは思わなかった。
「でも、オレもどんな意味か分からない。だから、考える」
「――――……」
「だけど、好きなのは、絶対、好きだ」
さっきまで、赤くなって、瞳潤んで、ちょっと泣いてたのに。
凛とした、綺麗な瞳で、オレをまっすぐ見つめて、そんな風に言う。
「絶対好き」だって。
――――……はは。やば。 すっげー嬉しいかも。
今じゃなくて良いって言ったのに。思い切りは。いいよなあ。
――――……やっぱ、カッコイイよな、先輩。
ふ、と笑ってしまう。
頬に触れて、その瞳を見つめたまま近づいて。
「オレ、先輩のその瞳が、すげー好き」
そう言ったら。
さっと、顔に熱が走る。
キレイだし。
カッコいいし。
でもって、恋愛関係だけ、アホみたいに可愛くて。
――――……絶対、勝てない気がする。
「――――……」
昨日まで、キスするなんて、考えた事も無かった、唇に。
――――……今までに無い位、キスしたくて。
触れるだけのキスを、何度も、した。
先輩が、照れすぎて、もう、これやめて、と、言うまで。
――――……ディープキスより、触れるだけのが恥ずかしいって。
マじで、可愛い。
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