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第86話◇興奮 ※

 名前呼ばれるだけでぞくぞくするとか、言っちゃうとか。  ……いくら昨日、そういう時にずっと、囁いてたからって。  快感と、連動しちゃってるのかな。  オレに呼ばれるのが。  なんだかな。 「――――……っ……ん、ふ……」  口の中に舌を入れて、上顎を舐めると、びく、と震えながら、上向いた。  やりやすいように、動いたみたい。  ……かわい。  ぴちゃ、と唾液が絡む音が響く。 「…んン… ――――は……」  ――――……抑えようとしてるんだとは思うんだけど。  だから余計、耐えきれなそうに漏れるのが、エロい……。  散々口の中、舐めて――――……それから、また舌を絡めた。  ちゅ、と吸って、オレの口の中に、招き入れる。 「……ぅん、ン……」  キスは――――……上手なんだと思う。  しやすいように、顔を傾けてくれるし。口も、合わせて開けてくれるし。  オレがしたい事が分かってて、合わせようとしてくれてる気がする。  でも当然こんな風に、上向いて「される」って事は無かっただろうから。  息は、苦しそう。上向いてる喉が、たまに苦しそうに、ひくついて、たまに、こく、と唾液を飲み込む音がする。 「……――――……ん、ふぁ……」  首筋辿りながら、ヒクついてる喉に、手を這わせると、声が漏れた。 「……み、か」  唇を外されて。  涙が潤む瞳で、見上げられる。  自然と、ごく、と喉が鳴った。  ――――……やばい。興奮、しすぎ、オレ。 「……三上って――――……」 「……はい?」 「……っ激しすぎ、ない……?」 「――――……」  また何言ってんだろ……この人。  先輩は、手の甲で自分の口を押えて。  少しオレと離れる。 「……三上、いっつも、こんなキス、なの? もう、なんかこんなの……このまま、ベッド直行しそう、なんだけど……無理、きつすぎるし」  プルプルと首を振って、そのままぷい、と横を向かれてしまう。 「――――……」  ダメだ、落ち着かないと、と思うのだけれど。  涙目可愛いし。  そっぽを向いた、首筋が、綺麗で。 「え。 なに――――……っ?」  頬に手を触れて、離れられないようにしておいて、先輩の、首筋にかぷ、と噛みついた。 「……っひ、ゃっ……っ」  大きく震えたけど、少しだけ力を入れて、押さえて、首筋、舐める。 「……んん――――……っ」  首筋、弱い。  可愛い。 「あ、ちょっ、待っ……っ」  ちゅ、と吸い付いて、少しだけ痕を残す。  びく、と強張って。  先輩がぎゅうっと瞳を伏せる。 「や、もう…… やめ、て、無理」 「……無理ですか?」 「……っから……っちゃう、からっ」 「え? 何て?」  聞き返したオレを、きっと、睨む。 「……もう、たっちゃうってば…………っ」  ……なんか昨日もこんなこと言ってたような。  ああもう。  だめだ、可愛くて。 「風呂場でさせて」 「……っ」  バスタオルと浴衣を集めて持つと、もう、先輩の手首掴んで引いて、風呂場に連れ込んだ。 「脱がせますよ」 「……っ」  先輩の服に手をかけると。  緊張しまくって固まってる先輩に。  こっちまでドキドキして。   一瞬手が止まってしまった。   「――――……?」  止まったオレを見上げる、先輩。  可愛い。  ちゅ、と柔らかく、キスして。  服の裾から、中に手を入れて、その肌に、触れた。

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