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第88話◇照れすぎ

   もう、いかにもドキドキしてますって顔で。  オレに近付いてきて。 「――――……」  手。服にかかった。  と思ったら。  ムードもへったくれもなく、すぽっとめくられて頭抜かれて。  なんかもう。すぽーん、という感じで、服、奪い取られた。  もう、脱がされたとか、なんかそういう色っぽい感じじゃなくて。  あっという間に、奪われた。  ――――……ぷっ、と、吹きだしてしまう。 「ちょ、待って…………」  ダメだもう、無理。我慢できる奴なんか、居るかっつーの。 「……ほんと、あの――――……やめてもらっていいですか……」  クックックッ。笑いすぎて、涙まで出てきた。  もう、無理。 「さっきオレがどう脱がせたか、覚えてます?」 「……っ覚えてるけどっ」  オレは、キスしながら。  ゆっくり、触れながら、そっと脱がせたはず。  普通そうじゃねえの?   「……っ無理」 「……ね、女の子脱がす時も、こうやるんですか」  思わず気になってついつい聞いてしまうと。  奪われた服を、先輩はオレに押し付けてきた。 「……っ女の子に今みたいにやるわけないし」  すごい嫌そうに言ってるのを見てたら、ようやく、笑いを収められてきた。  そろそろほんとに怒りそう。  いやでもさ。  これ笑ったって、オレが悪いんじゃない。  何なんだ、もう……。     「……ね、陽斗さん」  オレは、押し付けられた服をカゴに落としてから、先輩に向き直った。 「……下は? 脱がせてくれないんですか?」 「――――……っ」 「ちょっとはムードありで、やってほしいなぁ……?」  そう言うと。  ムッとしてた先輩は、一気に真っ赤になって。  それから、ぐ、と唇をかんだ。  ……なんか、意地になったみたいな気がする。 「――――……やる」  今度は、ゆっくりと。  ズボンのウエスト部分に触れてくる。 「――――……」  俯いて。下をずっと見たまま固まる。 「……陽斗さん?」  声をかけたら、びく、と手が揺れる。 「なんでそこで止まってンの?」 「これ……ズボンだけ、ぬがす?」 「――――……っ……」  かろうじて堪えなかったらオレ、絶対笑ってる。  ダメだ、もう、可愛くて。 「――――……あのさ。オレ、やってもいい?」 「……」  なんかちょっとホッとした顔の先輩。  ああ、ほんと。  可愛いんだけど。  ちゅ、と口づけて。  自然と瞳を伏せた先輩の顔を見つめる。  かわいーなー……。  服、脱がせるとか。  ……女の子とか相手なら、絶対普通にちゃんとやってたんだろうに。  オレには、できねーんだな。  男だから?? 本当に、照れすぎ。  何でそんなに恥ずかしいんだろ……。  多分、なすが儘にされてんのが悔しくて。オレにも恥ずかしがらせたくて、自分がやるとか、言い出したんだろうと思うけど。  照れすぎて、あんな風にしかできないとか。  ほんと、どーいう事……。 「――――……ん……」  少しキスを深くして、上向かせている間に、先輩のズボンと下着、するりと滑らせた。膝の所まで滑らせてしまえば、すとん、と足首の所まで落ちた。  全部、脱がされた事を知ってか、先輩が、キスされながら、もぞ、と動いてる。 「……は……んン」  空気を吸いながらキスに応えて、声が漏れてくる。 「……み、かみも……」 「……ん? 何……?」  外された舌をぺろ、と舐めながら、聞いたら。 「――――……三上も、脱いでよ……」  そんな風に言われて。  1人で裸なの、恥ずかしいんだなーと思うと。  ああもうなんか。  究極、可愛い。 「……陽斗さん、ズボンと下着下げて」 「…………」 「早く」  言って、そのまま口づけていると。  背中に抱き付いてた手が、する、と滑って来た。  ゆっくり、中に指が入ってきて。  そのまま、下に降ろされて行く。うまく脚を動かして、服を下に落とした。 「――――……ありがと、陽斗さん」  そう言って、少しだけキスを外して見下ろすと。  何だか恥ずかしそうな顔で。  でも、何も言わず、引き寄せられるみたいに、オレにキスしてきた。

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