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第91話◇陽斗side1

 朝から、色々精神的にドタバタで。  でも、三上と居るのはすごく楽しかった。  ほんと、モテそうな所しか目に入ってこない。  それで、オレは、それを少しムカつくと思うみたい。   ――――……煽ったらキスするとか言われたら、キスしたくてたまらなくなって。オレってば、まさかの、トイレに連れ込むという暴挙。  ……信じられない。  なんかオレ、昨日から自分のする事や言う事が信じられない。  三上と話して、三上と触れ合ってると――――……  頭ん中、麻痺していくみたい。  トイレで、キスしたいと伝えて、キスしてもらって。  そしたら。   「――――……オレ、先輩が好きです」  そう言ってくれた。  そういう事に飢えて、したいからしてるんじゃなくて、  オレを好きだから、してるって。  まだちゃんと過ごして2日目だからどんな好きか分からないけど、どんな意味でも好き、とか。  だから、オレにもどう思ってるかを考えてと、三上は言った。  本当。  気持ちいいくらい、まっすぐな視線。  ほんと。  ――――……良い男だなと、思ってしまう。  後輩だし、年下だけど。  なんか、ほんと、頼れるし。  ――――……なんか、三上の言う事は、筋が通ってて。  そのまっすぐな強い視線とセットで、胸を揺さぶってくる。  それに比べて、全然はっきりしてないオレ。  そのくせに、キスしたいとか。なんかオレ。  こんなんじゃだめだ、と思って。 「――――……オレも、お前のこと、好きだよ」  そう言った。 「でも、オレもどんな意味か分からない。だから、考える。だけど、好きなのは、絶対、好きだ」  三上の、まっすぐな言葉に応えなきゃと思って。  思う言葉を口にしたら、はっきりと、それだった。  でも言ってからすぐ、自分の言った言葉に気付く。  好き、だって。  三上の事が、絶対、好きだって。  オレ今、そう言ったよな。  やば。  ……恥ずかしくなってきた所に。 「オレ、先輩のその瞳が、すげー好き」  そんな風に言われて、鮮やかな笑顔で笑われて。  一気に赤くなった、と思う。  もうなんか――――……。  三上って……なんだかな。 ◇ ◇ ◇ ◇ 「ん、先輩、お水」 「ありがと……」  お風呂から出て、ホカホカしてる体を冷ましていると。  ペットボトルの水を渡された。 「――――……美味し……」  水、冷たい。  温泉で、くっつきすぎて、温まりすぎた。  昨日の三上みたいにノボせる前に出れて良かった。  ふ、と昨日の三上がよみがえって、くす、と笑ってしまった瞬間。  ぱち、と音がして同時に、部屋の電気が落ちた。  隅っこの暗めの電気だけ残される。  昨日の時と同じ明かり。  ドキ、と弾んだ心臓が、そのまま激しく音を立て続ける。  うわ。  ――――……めちゃくちゃ、緊張、するし。  どーしよ。  ドキドキしまくっていると。  三上が、オレの手を引いて、立ち上がらせた。 「――――……嫌じゃないですか?」  向かい合って、まっすぐにそう聞かれる。 「……今更じゃない? 三上」  ぷ、と笑ってしまう。  あんなにお風呂でキスして、色々して、ずっとくっついて出て来てるのに。  嫌じゃないかって。 「今更、嫌な訳、ないし」  昨日のあの時まで、三上とキスするなんて、一度も考えた事なかった。  なのに、どうして今、こんなにキスしたいのかな……。  静かに、三上にキスしてみた。 「……三上は? ……良いの?」  少しだけ離れてそう聞き返したら。  ――――……深く、唇、塞がれた。 「……ン、ん……」  舌が絡んで――――……ゆっくり離れる。 「オレは、良いとかじゃなくて――――…… したいんですってば」  熱っぽい声と、瞳。  三上の手、熱い。  ああ、なんかもう。  ――――……どうにでもして、とか、好きにして、とか。  こういう気持ちの時に言う、セリフかなぁ……。  ……絶対、言えないけど。

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