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第92話◇陽斗side2

 布団に、組み敷かれる。  と言っても、まだ完全に横にはなっていない。  枕が2つ並んで置いてあって。  オレは、それを背後に、少し斜めに、倒されて。  三上が、膝をついた形で、上に居る。  どっくんどっくん。というのか。  ばっくんばっくん。というのか。  し、心臓が、壊れる。  それか、血管が、爆発する。  こんなに激しい音がしてて、大丈夫なのかなと、ただ、斜め上の三上を見上げていると。 三上は、布団に来る時に持ってきたものを、オレに見せた。 「……あとでこれ、使いますね」  ひとつはゴム。それは、見せる訳ではなくて、箱から出されて置かれただけ。もうひとつは、何か、黒とピンクの派手な入れ物。 「……何それ?」  なんか、普通に出してるつもりの、声が上擦っている気がする。  つか、もうオレ、しっかりしろよっっ!  こういうシチュエーションなんて、上下が逆なだけで結構してきたじゃんか! そうだ、よく考えたら、何もしなくていいんだ、してもらうんだから、楽なんじゃないかな、うん。緊張しないで、なんならただ寝てれば……。  とか、とんでもないマグロ宣言が自分から出そうになった所で、いや違うだろ、と自分を止める。  ああでも、一体どうしたら。 「これね、ローション」 「――――……ろー……」  頭になかった単語に首を傾げて言いかけた瞬間に、意味がはっきり分かって、言うのを止めた。けれど時すでに遅く、ボボッと血が一気に顔に集まった。 「……っ!!」  っそれもさっき買ったの?  ……ていうか、そっか、使わないと、ダメか。  そりゃそうだよな、ていうか、何でオレは考えなかった?  ていうか、そんな普通の顔して、そんな物見せんなよー!  1ミリも動けないまま、目の前のローションを凝視したまま、心の中で叫んでいると。  三上が不意に、手で口元隠しながら、ぷっと笑った。 「……っっ」  何で笑うんだよ!! もう!!  んなもん急に出してくるから悪いんじゃん……!!   言ってから出してよ、そしたら、少し心構えしてから、目に映せるのに!!   「あー……ほんと、可愛い」  三上はローションの後ろの説明書きを見てから、オレに目を向けた。 「これ、舐めても大丈夫ですって」 「――――……」  なめ。ても…………。 「先輩、色んなとこ、舐めてもいいですか?」  ………待って。  それの意味するのは。  そのローションを塗ってから、さらにそこを、舐めるという、こと?  色んなとこって、どこ…………。 「~~~~っ もう、いやだ、三上」 「っと……」  もう、三上の下に大人しく居る事が嫌になって、逃れようとした所を、何だか軽く押さえつけられてしまった。 「――――……っっっ」  声にならない叫びとともに、三上を睨むと。 「……陽斗さん」  クスクス笑った三上に、掴まれた腕をもとの位置に戻されて、布団に軽く押し付けられる。 「ごめん、なんか可愛くてつい」  そんな事を言いながら、また完全に三上の下に入れられて、さっきより斜めに布団に近付いてしまったオレの、首筋に顔を埋めてくる。  くすぐったすぎ……。  きつく瞳を閉じて、もはや逃げるために動こうと思うけど、何だか三上の体と手でうまく押さえつけられてて、全然逃げれない。 「――――……初めてだからさ。 ちょっとこれの助け借りて良いです?」 「……っ……」 「……色んなとこに、これ使っても良い?」 「――――……っ」  ぷるぷる、首を横に振る事しかできない。  恥ずかしすぎて、何の言葉も浮かばない。 「使った方が、気持ちいいと思うから」  なんか、舐めるようにゆっくりと、頬にキスされる。  ぞく、と腰に震えが走る。 「……っ……今まで、使った事、あんの?」 「無いですけど――――……多分湿り気あった方が、感じやすくなると思うんだよね。でもノーマルぽくないから、さすがに聞いてからにしようかなと思って……」  喋りながら、ちゅ、と音を立てながら、首筋を辿って、降りていく。 「ごめんね、意地悪しようと思って見せた訳じゃないんだけど」  三上は、そこまで言ってから、くっ、と笑う。 「あんまり真っ赤になるから可愛すぎて、聞き方意地悪になってたかも」  言いながら、ぢゅ、と吸ってくる。  鎖骨当たりに刺激が走って、びく、と体が震える。  なんか。始める前から。気が遠くなりそう。  

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