103 / 274

第103話◇腕枕

 しばらく抱き合った後。  もう少し寝ましょうかと聞くと、先輩が頷いたので、布団の部屋に戻った。  さっき2人で一緒に寝てた方は乱れていたので。 「――――……こっちで、一緒に寝ますか?」  そう聞いたら。 「うん」  やたら素直に頷いて、先輩が同じ布団に足を向ける。先に布団に座って先輩を見上げると、めちゃくちゃ照れたように、すとん、と勢いをつけて隣に座った。 「――――……なんすか、それ」  ぷぷ、と笑ってしまう。 「……恥ずかしくないか? 普通に同じ布団に入るとか」  だめだこれ……とぶつぶつ言いながら、立てた膝の間に顔を埋めてる。 「――――……陽斗さん」 「……っう、わ」  抱き寄せて、そのまま、布団に転がる。 「なんかほんと――――…… 可愛いですよね」  クスクス笑うと、先輩は口を閉ざして何も言わない。   「――――……腕枕したら、怒ります?」 「……今更それ位で怒んないけど」  クスクス笑って、「でも重いよ?」と言う。 「怒らないなら、させてください」 「――――……」  枕と先輩の間にうまく腕を挿しこんで、そのまま抱き寄せてみる。 「寝辛いですか?」 「……大丈夫」 「このまま寝れそうですか?」 「……うん」  なんか――――……ものすごく、穏やかな、時間。  先輩の声もゆっくりだし、ものすごく静かで。 「お前、腕枕、うまいなー……」  ぽそっと、先輩が呟く。 「うまいって……うまいですか?」  くすくす、と笑うと。 「……慣れてる?」  そんな風に聞かれる。 「……慣れて――――……まあ何回かはしたことありますけど……」 「……ふーん」 「……ヤキモチですか?」 「――――……ちがうし」  からかいまじりに聞いてみると。少し黙った後、ぽそ、と呟く、  なんか可愛いので、抱き締めてみる。 「…………お前さー……」 「……はい?」 「タラシだろ……絶対……」 「――――……」  タラシ。  ……久しぶりに聞いたな。  女タラシ。  一番聞いてたのは、高校生ん時かなあ。 「……陽斗さんが今オレに、タラサれてるってことですか?」 「……そんな事は……言ってないし」  また長い間が空いて、先輩がぽそ、とそんな事を言ってる。  ……あーなんか、可愛いな……。 「……オレ腕枕されんの初めて」  とか。急に言う。  もう、ぷ、と吹き出してしまう。 「女の子に腕枕されてたらびっくりですけど」 「……まあそーか」 「……てか、オレだって、腕枕された事なんか無いですよ」 「……まあそーだよね」 「あんまり男は腕枕はされないですよね」 「――――……じゃあ腕枕する?」 「え?」  先輩が急にオレの腕の中から抜け出して起き上がると、枕にぽふと改めて埋まった。何事かと、肘をついて起き上がってるオレに向けて、ほい、と腕を伸ばしてくる。 「はい、来てみ?」 「――――……」  来てみ、って。  ――――……オレ、そこに行くの?   すげー恥ずかしいんだけど。  

ともだちにシェアしよう!