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第104話◇あますぎ
オレが完全に硬直してると。
先輩は不思議そうに、見上げてくる。
「……三上?」
あれ? 三上、何で来ないの?みたいな顔してるけど。
「――――……っ」
オレが、先輩の腕の中に、自分から倒れるの?
……いや、なんか、無理。
突然の非常事態に完全に強張っていたら、先輩は。
「もー、なんなの、何でこねーの? つか、このカッコも恥ずいんだけど」
なんか仏頂面になってしまった。
そんな事言われても。
行けるわけ、ねぇし――――……。
思っていたら。
急に、先輩の腕がオレの首にかかって。ぐい、と引かれた。
「――――……っ」
先輩の肩に、頭押し付けられて、ぎゅ、と抱き締められた。
腕枕と言うのかはちょっとよく分からないが、とにかく、先輩の腕の中に抱き締められはしている。
「……どう?」
「――――……え?」
「初腕枕は? 感想はどうなのって聞いてんだけど?」
ああ。
……初、腕枕、ね……。
――――……初腕枕……。
つか、恥ずい、しか無いんだけど……。
どう言おうか考えていたら。
突然気づいた。
頭押し付けられていると近い、先輩の胸の音。
「……なんか、めちゃくちゃ――――……ドキドキしてます?」
「…………っ……」
顔を上げて、先輩の顔を見たら。
なんかもう、赤いし。
「――――……」
なんでこんな可愛いんだろ。
自分から、してきたくせに。
心臓、死ぬほどドキドキしてるとか。
「やってみたら、急に、本気で恥ずかしかった」
指摘されたからか、余計に真っ赤になった先輩に。
――――……なんかもう、無理。
ゆっくり先輩の上に押し乗って、その手首を顔の横で軽く押さえて。
じっと、先輩を見下ろす。
「――――……み、かみ?」
息を飲んで、オレの名を呟くと、先輩はオレをじっと見つめ返してくる。
そういえば、オレが陽斗さんて呼んでも照れてないけど。ちょとは慣れたかな。
でも……先輩は、シラフの時はずっと三上って呼んでるなぁ。
「……キスしていいですか?」
そう聞くと。
先輩は何秒か止まって、それから、ふわっと笑った。
「――――……だからさ。もうほんとに、三上ってば全部、今更すぎなんだよね……」
その頬に触れて。
ちゅ、と頬にキスする。
まあ確かに。
今更な気はする。先輩にも、今更って何回言われたか。
「んー……じゃあ、聞き方変えますね」
「……うん?」
「……オレに、キスされたいですか?」
じっと見つめて、そう聞くと。
先輩は、少しして、また笑った。
「……聞き方変えたって一緒だってば」
「――――……」
「オレもしたいから全部したんだから……」
そのセリフを聞いてなんだかすごく嬉しくなって。
オレは、先輩の唇にキスした。
柔らかくキスを重ねて。
その顔を見つめる。
「陽斗さんてさ」
「……ん?」
「オレに甘すぎるなーとか、思いませんか?」
そう聞いたら。
先輩は、クッと笑って。
オレの頬に触れて、ちゅ、とキスを返してきた。
「……すごく思うかも……」
「ですよね……」
2人で見つめ合って、クスクス笑ってしまう。
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