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第110話◇恥ずかしいの基準

 風情のある神社を一緒に歩き終えて、先輩と外に出る。 「なんか神社とかって、やっぱり神聖な感じするよなあ。外にでると、なんか空気が違う」 「昨日今日ですごい回りましたもんね。 良い事あるんじゃないですか?」 「うん。だな」  にこにこ笑ってる先輩に、ふ、と微笑んでしまう。  一昨日、昨日、今日。  たった3日で、こんなに関係が変わった人って、初めてかも。  ……しかも、最初は、全然好きじゃないと、思っていた人と。  まあ今となっては、その時も、大分惹かれてたんだろうなと、思うけど。 「先輩、きな粉の店、行きますか?」 「うん、いこ――――……って、三上はきな粉スイーツでいいの?」  そう聞いてくる先輩に、可笑しくなってしまう。 「いいですよ。オレは何でも……ていうか、あんなに嬉しそうに決めといて、オレがダメって言ったらどうするんですか?」 「あー……うん、どうしようかなー」 「そうですよね」  クスクス笑ってしまうと、先輩、んー、と苦笑い。 「いいですよ、オレはスイーツに関してはほんとにどこでも。先輩が幸せそうに食べてくれれば」 「――――……またそういうこと、軽く言う」  先輩のそんな言葉に、苦笑いしていると。 「ほんと、三上、タラシ」 「ていうか、先輩にしか言ってないですよ」 「だからそれもだって。ほんとタラシ」  呆れたように笑う先輩に、オレも苦笑い。  んな事言っても、ほんとに思うんだから、仕方ない。  先輩の目当ての店は神社を出て5分位の所にあった。  まだ開店したてらしく、またしても人が居ないスイーツの店に、男2人で。しかも今日はスーツで入る。  きっと、変に目立つよなー、オレ達。  また雰囲気の良い、和風な店。  席に着いて、なんだかすごく落ち着く内装を見回していると。 「こういう店好き?」 「うん。そうですね。すごく感じが良いし」 「オレも好き。京都って、いいなー」  そうですね、と言いながら、これまたすごくオシャレなメニューを開く。 「和紙みたいな素材でできてますね、このメニュー」 「いいね。……家の近くにあったら通うかも」 「だったらオレも一緒に通いますけど」  そう言ったら、先輩、ぷぷ、と笑った。 「三上そんなにスイーツ食べないじゃん」 「オレは先輩と一緒に居たいから通うんですよ」 「――――……」  メニューから完全に顔を上げて、先輩はじっとオレを見て。 「……なんか。三上って」 「はい?」 「……恥ずかしいよな」  そんな台詞に、苦笑いしか浮かばない。  オレが恥ずかしい奴なのか、それを言われた先輩が恥ずかしいのか、どっちだ?と一瞬思ったけれど。  はー、と、ため息を付きながら、メニューで隠れたので、多分先輩が恥ずかしいんだろうなと思って。 「先輩、隠れないでください。ていうか、メニュー見せて」 「いやだ。お前、恥ずかしいから」  ……つか、オレの今のって、そんな恥ずかしい?  オレ、今一緒に居たいからって言っただけだけど。  ――――……そんな恥ずかしいかな。  先輩がたまにぶち込んでくる、色んなセリフのが、よっぽど恥ずかしいと思うんだけど。  基準がよく分かんねーな。  と思いながらも。  なんか、そんなのも、面白くて。  この人がすごい好きだなと思ってしまうんだけど。  ……つか、なんでも好きなんだろうな、オレ。  なんかもはや、そんな風に、諦めが入ってくる。 「……ていうか、オレもう、食べるの決まってんだよ……」  ああ、そういえば。パンフレットにのってるの食べようとしてたよな。  仕方なさそうにやっと、メニューをオレに向けて。  ちら、とオレを見る。目が合うと、む、と固まってる。 「もうこっち見んな。 メニュー見て、早く決めて」 「何ですか、それ」    可笑しくてしょうがないけど。  なんか可愛いので。  言う事を聞いてあげる事にして、メニューに視線を落とした。

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