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第112話◇タラシ?
はー。もう。
絶対からかわれてるな。
む、としていると。
「嘘、ごめん。――――……別に気にしないよ。社長がそう言った気持ちも分かるし、将来的にって事だろ?」
「――――……」
「それって全然普通の事だし。……なんか三上が、あ、ヤバい事言った、みたいな顔するからさ。ちょっと遊んだだけ」
クスクス笑って、先輩は言う。
――――……けど。
「……ほんとは、ちょっと嫌だったんじゃないですか?」
「――――……」
ふざけてただけには、見えなくて、そう言うと。
一瞬黙って。それから先輩は、「そんな事ないよ」と笑う。
またパフェに視線を逸らそうとするので。
「オレ――――…… 先輩と居れるなら、しませんよ、結婚」
思わず、言ってしまった。
すると先輩は、びっくりしたみたいに顔を上げて、オレをまっすぐ見つめて。それから、ふ、と苦笑い。
「……何言ってんの、三上」
「……今本気でそう思ったので」
「――――……ほんと恥ずかしいな、お前」
――――……そんな風には言うけど。
先輩は、少し恥ずかしそうで。
嫌そう、ではなくて。
照れてる、ぽいので。
「……話せて2日しか経ってないですけど――――…… 話せるようになる前から、オレ、先輩の事、嫌いになれなかったし。元から――――……」
「分か、った……から――――……ちょっとストップ」
先輩はオレを止めて、ちらっと店内を見やる。
「――――……三上、なんか顔マジすぎて、目立つから。……後で話そ?」
確かに。
……そうかも。
……何言ってんだろオレ、こんな、スイーツのお店で。
プロポーズしようとしたのか? オレ。
付き合っても無いのに。
男に、プロポーズとか。
………普通に考えても、ぶっ飛びすぎてると、一瞬でかなり反省。
でも、言っても後悔していないので、オレは本当にそう思ってるのだろうけど。
……オレ達の今の状態で、こんな所で、こんな風に言う事じゃないか。
「……すみません」
思わず、謝る。
「言った事取り消そうとかは思わないですけど……ちょっと走り過ぎたかも。……すみません」
むしろそれまでよりも早く、ぱくぱく、とパフェを口に入れながら。
先輩は、オレを見てたけど。
オレがそう謝った所で、じっとオレを見つめた。
しばらく無言で見つめ合った後。
「――――……お前ってさー」
しみじみと、言葉を吐き出すみたいに、そう言って、まだ黙る。
「――――……?」
お前って。……何?
かなり長い事、沈黙。
先輩は、はー、とため息をついてから。
「――――……ほんとタラシ……」
ぽそ、と呟く。少し困ったような表情で。
「――――……」
……またタラシとか言われた。
なんか。面白くないけど。
先輩は、苦笑いはしてるけど。
やっぱり照れてるみたいで。
――――……視線は合わないけど。
このまま、タラされてくれるといーけど。とか。
……そんな風に、思ってしまう。
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