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第113話◇バレる?
「先輩、わらび餅、どれくらい食べます?」
「三上食べちゃって良いよ?」
「いや、大丈夫です」
「だって美味しいって言ってたじゃん」
きょとん、としてるけど。
「だから、オレ、一口目が一番美味しいんですって。甘いの、続くと……」
「ほんと、変なの、三上。全然意味わかんない」
「分かんないですか?」
「うん。一口め美味しいなら、その後もずっと美味しいじゃん」
「……うえってしてきますけど」
「全然分かんない」
言いながら、オレを見て笑う。
――――……ドキ。
金曜からこっち、笑顔にもだいぶ慣れたんだけど。
――――……楽しそうに、目を細めた笑顔で見つめられたりすると。
胸が弾む。
は。
――――……好きすぎ。オレ。この人。
「じゃあ後一口食べたら、先輩にあげますね」
「いーの?」
そんな風に言いながら、嬉しそう。
もう一口わらび餅を口に入れる。
まだ美味いけど、やっぱ、これ以上は要らないな。
「はいどーぞ」
「ありがと、三上」
わらび餅の皿を真ん中に置いて、先輩がきなこスイーツを食べ終わる所を見守る。
……こんな甘党とか。
食べてる時、幸せそうで、なんか幼くなって、ほんと、可愛く見える。
そんな事を考えながら、先輩を何となく見つめていたら。
「夜には東京だなー……」
ぽそ、と先輩が呟いた。
「……そうですね」
「明日からまた会社だな」
「……そうですね」
帰りたくないなー。しばらく先輩とここに居られたらいいのに。
そんな風に思っていると。
先輩がいただきまーす、とわらび餅を食べ始めた。
「美味しー」
あんまりに幸せそうなので。
ふ、と笑いながらその様子を眺めていると。
オレをふと見た先輩は、ちょっと眉を顰めた。
ん?と見つめ返すと。
「……三上さ」
「はい」
「会社で、オレの事、あんま見ないで」
「――――……はい?」
……何だって??
先輩は、もう一口、ぱくっと食べてから。
「……そんな優しい顔で見つめてたら、バレる」
「――――……」
優しい顔って。……してたかな?
そんな言い方をされると、なんか無性に恥ずかしいけど。
でもそっちよりも、今気になるのは。
「……バレるって、何がですか?」
どうしても気になって聞いてみた。
え、と先輩が顔を上げて、それから、あー……んーと……と首を傾げてる。
「……バレるって――――…… なんか、色々」
「色々って?」
「……キスしたり……」
「バレませんよ」
「……色んな事、したり」
「バレないですよ」
「――――……」
「オレが先輩見てるからって、オレ達がそんな事したなんて、誰も思いませんよ」
「――――……そう?」
「そうですよ」
そっか、と先輩は一度口を閉じて。
それからまたわらび餅。
「ほんとこれ溶ける……」
ほくほくになった先輩が、ほんと可愛い。
と思ってたら、また、先輩が、眉を顰める。
「……だから、そういう顔だってば、絶対バレるから」
「――――……」
……またオレ、そういう顔してたってことか。
まあ確か、今、ものすごく可愛いなーと思っていた。
なんかすごく困ったみたいにふくれてるのが、なんか可笑しい。
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