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第115話◇side*陽斗 1
急に。
三上が、キス、してきた。
「――――……み、か……っ」
何で、キスすることに、なったかと言うと……??
◇ ◇ ◇ ◇
スイーツを食べた後、少し京都の町を歩いてお土産とかを買いながら。
三上が予約してくれて、入ったのは、個室の料理屋さんだった。
注文はタッチパネルでしてくださいと言って、店員がドアを閉めて、出て行った。
「こんな個室の料理屋さんもあるんだね」
「夜は居酒屋みたいですよ」
「へー」
ふと、部屋を見回して。
「ヤバい事しても、バレなそう……」
と、思った事を、素直に言ってしまった。
だって個室とかって。
……しかも、今の三上とオレで、個室とか。
なんかもう、そっちの事しか、考えられないというか。
口にしてしまってから、三上が固まった事に気付いて。
あれ? なんか固まってる……と、三上に視線を向けると。
「……別にオレ、ヤバい事しようとしたわけじゃないですよ」
と、三上が言う。
「え。あ、分かってる。けど……」
「――――……さっき、話してる途中で、先輩――――……陽斗さんが、目立つからストップって言ったでしょ?」
あ。……陽斗さんに、変わった。
スイッチが、切りかわるみたいに。
三上の視線が、変わる。
さっきオレ、咄嗟に、言ってしまった。
三上がオレを見続けて、それに気づく人が居たら、三上がオレを好きな事に気付く人は居るかも、と言った時。
オレは、その三上の言葉に対して。
それを見つめ返すオレを見られたら、「オレのもバレる」なんて。言ってしまった。
……もうなんか。
そりゃ昨日も、テーマパークのトイレで、好きだとは言ったけど。
どんな意味か考えるとか言ったけど。
昨夜色んな事、三上として。抱き合って、眠ったりして。
……オレが三上を好きなのは、もう完全に、そういう意味な気がする。
出来る訳ないじゃん、ただの後輩と。いくらマンツーマンの可愛い後輩だったとしたって。……今まで可愛がりたくても可愛がることが出来ずに来たけど…… その気持ちがすごく盛り上がったとしたって。あんな事、ただの可愛い後輩と出来るわけがない。
もう出来た時点で、もう気持ちは決まったも同然だって、もう分かってる。
だから――――…… 陽斗さん、と呼ぶ、三上のこの視線は。
物凄く、心の奥に、突き刺さる気が、する。
「これから新幹線だし、東京に帰ってご飯食べるにしても、知り合いがいるかもしれないし――――……昼食べながらゆっくり話したいって思っただけです」
「――――……うん。わか、てる」
「なのに何で、ヤバいこと、とか言うんですか?」
三上が、はー、とため息をつく。
「そーいうこと言われると……そっちを考えちゃうんですけど」
「…………ごめん、てば」
うぅ。やらしいことばっかり、考えてるみたいで、
すごく恥ずかしくなりながら、俯くと。
三上が、かたん、と椅子を引いて立ち上がった。
「陽斗さん、ちょっとこっち、来て」
座ってた手を引かれて、三上の手に任せてると、背をドアに押し付けられる。
向こうからは、一瞬、開かない状態。
三上の手が、腰と、背に触れる。
もう、三上を見上げるしか、ない体勢。
「……あのさ、陽斗さん」
「――――……うん」
「……オレ、何度もあんたに好きって言ってるし。陽斗さんも……そんなような事言ってくれて。でも、意味を考えようっても言ってるし――――……それでも、昨日、あんな風にしちゃって……」
「……うん」
「――――……正直、オレは、もう、陽斗さんと、付き合いたい」
「――――……」
「……意味なんか、もう、昨日の時点で分かってたし」
「――――……」
「好きじゃなきゃ、しない」
なんかもう。
三上のまっすぐな視線と言葉って――――……。
もう、心の奥の奥の奥の奥の……一番奥まで、入ってきてる気がして。
胸が締め付けられるみたいに、痛い。
「……陽斗さんも、オレが好き……?」
「――――……うん……好きじゃなきゃ……オレだって、しない……」
けど、と続けようとした瞬間。
三上の唇が、重なってきて――――……すぐに深くなった。
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