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第117話◇side*陽斗 3
「はいどうぞ。聞きますよ、陽斗さん」
「……うん」
2人、まっすぐ見つめ合って。
「あの、な、三上。結論から言うと……すぐ付き合うのは無理」
ドキドキしながら言ったセリフに、三上はすぐに。
「はい」
特に驚く風でもなくそう返事をして、それから、またじっと見つめてくる。
「……オレ、今、お前の事――――……すごく好きだと思う」
「……はい」
今度は少し驚いたような。それから、少し嬉しそうに、微笑む。
「だけど……恋人とか、急になるには……なんか考える時間も全然なかったし。こんなさ2人きりで2晩も一緒で――――……しかも旅先とか特殊だし。これで確定させるのはどうかと思っちゃうんだよ」
「――――……はい」
「特に三上はさ。仕事3年目でさ……慣れてきたし、これから、プライベートとかも結構楽しいはずの時期だと思うんだよね」
「――――……うん」
まっすぐな瞳は、何だか、少し笑みを含んでて。
意外な表情に、拍子抜けしながら。とりあえず言ってしまおうと話し続ける。
「東京に帰って、日常に戻ったら少し落ち着くだろ? この盛り上がってんのが落ち着いてから――――……三上もさ、普通に過ごしてもらっていいしさ。それから、決めない?」
「――――……んー……」
しばらく、三上は黙っていて。
それから、ふ、と笑った。
「最後のだけよく分かんないんですけど」
「……うん?」」
「オレが普通に過ごすってどういう意味ですか?」
「――――……」
「普通ってことは――――……合コンしたり、女と遊んでいいってこと?」
「――――……そういうのも含めて、言った」
「良いんですか?」
「……うん」
ふーん、という表情で、三上がオレを見る。
「……陽斗さんも、そうするってことですか?」
「……オレももちろん、自由に考えるけど――――……ほら、オレは……一昨日まで、あんな事で悩んでた位、だからさ」
「……キスとか、平気になったんじゃないですか?」
「――――……?」
何のことかと思って、三上を見つめると。
「キスしたいって、今は思いませんか?」
そう聞かれて。ふと浮かんだ言葉を言って良いのか迷って、口を閉ざしたら。
「今何考えました? 困った顔してないで全部言ってよ」
鋭いなー。三上……。
オレは、ため息をついて。
「……三上とすんのは、気持ち良いのは分かったけど……他としたいとは、今んとこ思わないかも………」
「――――……」
オレが考えてた内容までは予想もしてなかったみたいで。
今度は、ものすごくびっくりした顔をされた。
それから、三上は、ふ、と笑んで。
「……てことは、オレだけ自由にしていいってことですか……」
三上はしばらく、だまって考えていたけれど。
「質問なんですけど」
「……うん、何?」
「その、答えが出る前に……陽斗さんにキスしたくなったら?」
一瞬止まってしまう。
――――……でもなんか今更キス位でダメとかいうのも……。
「……いいよ」
「じゃあ、抱き締めたくなったら?」
「……いいよ」
「――――……じゃあ、抱きたくなったら?」
「……そこはちょっと、考える……」
「なんでそこは考えるんですか?」
「……なんかそれオッケイすると、セフレみたいで、嫌だから……?」
ぷっと笑って、三上は苦笑い。
「オレが陽斗さんの事、そんな関係の人にする訳、ないですよね……」
「――――……」
三上は、んー、と声を出して。
楽しそうに、微笑んだ。
「……恋人を保留するのは、了解です」
「――――……」
「もっと変なこと言うかなーと思ってたから。まあまあ、普通でした」
「――――……もっと変なことって?」
「もっと、オレに考えもつかないような、変なこと言ってくるかなって」
三上はクスクス笑いながらそんな風に言う。
もっと変なことってなんだろう??
固まってると、三上は余計面白そうに、笑った。
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