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第118話◇side*陽斗 4
クスクス笑ってた三上は、じっとオレを見つめて、笑いを収めた。
「……陽斗さん、今のってさ」
「うん」
「もう少し考えたいって事でしょ? オレにも、もっと落ち着いて、ちゃんと考えさせたいんですよね?」
「――――……うん」
頷くと、三上は、ふ、と笑った。
「それを経て、ちゃんと付き合ったら、もう本気でずっと一緒に居るとか真剣に考えてくれるって事でいいですか?」
「――――……」
「適当に勢いとかじゃなくて、ちゃんと考えて、付き合ってくれますか?」
「――――……うん」
頷いたら。
「分かりました」
三上は、嬉しそうに笑った。
何だか、三上の反応が不思議。
――――……好きだけど恋人になれないとか言ったら、怒っちゃうかなと思ってたから。
何で?とか。
――――……言わないんだ。と思って。
…………あんなことしといて、キスとか全然許してて、好きとかまで言っておいて、付き合えないとか。意味わかんないとか、言われても、仕方ないかなと思って、少しドキドキしながら、言ったのに。
「三上、怒んねーの?」
「……何をですか?」
「好きだけど、今無理とか……」
「――――……」
気まずくて、少し困りながら言ったら。
三上は一瞬黙ってオレを見つめた。
それから、ふ、と瞳を緩める。
「怒るとかそういう事じゃないですけど」
「――――……」
「むしろ、真剣に考えてくれてるんだなーと思うから、今簡単にオッケイ貰うより、嬉しいですけど」
笑顔で言う三上。
――――……あ、そういう風に取ってくれるんだ。
と、思うと。
……なんか余計に、三上の事が好きだなと、思ってしまう。
オレ、好きだと思うとか、さんざん言ってるのに。
……付き合えないとか。やっぱり普通は、少なからず面白くないんじゃないのかなあと思って。
でも三上は、むしろ嬉しそう。
……なんか。ほんとに……。
「……変な奴……」
すごくニコニコ見つめてくる三上に、照れ隠しもあったけど、つい、本気で思ってそう言ったら。
「つか、何でですか」
三上は苦笑い。
その時、ドアがノックされて、店員が入ってきた。
食事をテーブルに並べて、出て行くまでの間。それを見ながら考える。
オレの方はもう、ほとんど決まってるんだよな……。
女の子とも結構付き合ってきた上で、
なんか疲れて、のらなくなって、全然そういう気が湧かないとか言って、もう多分2年……もしかしたら、頑張ってた時期も含めたら3年とかかも。結構な長期間、あんなだったのに。
色んな事あわせて考えても。
オレ多分、三上のこと、すごく好きなんだ、と思うんだよな。
人としても。
……そういう事する相手、としても。
だけど、三上は別に、オレみたいな妙な悩みがあった訳じゃないし。
……社長の息子だし、結婚とか、そういう事も色々ありそうだし。
まだ、ほんとに、若いし。
絶対、もっと、落ち着いて考えた方がいいと思う。
それは、オレの方も。
好きだけど。……ていうか、好きだからだな。
……三上の未来とか。乱していいのか、考えるべき。
退けるなら、退いた方がいいとも、思う。
食事を全部セットしてから、店員が出て行くと。
三上は、まっすぐにオレを見た。
「オレと付き合ってもイイって、先輩に言わせればいいんですよね?」
「――――……」
……そう言う事、とも言い切れないんだけど。
複雑な気持ちで、三上を見つめていると。
伸びてきた指が、頬に触れて、すり、となぞる。
「なんか先輩はオレを自由にしたい期間にしたいみたいですけど」
「――――……」
「オレは、先輩に迫る期間にします」
ぷに、と頬を摘まんで、それから、ぱっと手を離した。
「食べましょ、先輩」
笑顔で、言う三上。
何だかなあ。
……ほんと三上って。
なんだかなー……。
ほんとに。
ついつい。
……微笑んで、しまった。
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