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第122話◇期待しかないけど。
「質問なんですけど」
「……うん、何?」
「その、答えが出る前に……陽斗さんにキスしたくなったら?」
固まってるけど。
「……いいよ」
そう言ってくれた。
ああ、キスするのは、良いんだ。
――――……意外。
付き合うまでダメとか、言うのかと思った。
「じゃあ、抱き締めたくなったら?」
「……いいよ」
「――――……じゃあ、抱きたくなったら?」
「……そこはちょっと、考える……」
「なんでそこは考えるんですか?」
「……なんかそれオッケイすると、セフレみたいで、嫌だから……?」
セフレは、嫌なんだ。はは。可愛い。
――――……って、先輩の事、セフレなんて、ありえない。
「オレが陽斗さんの事、そんな関係の人にする訳、ないですよね……」
「――――……」
また、黙ってしまった。
――――……ふ、と微笑んでしまう。
ここまで、許してくれるとなると――――……。
なんかものすごく期待しかないけど。
とにかく、ほんとに、先輩はオレに覚悟がないとダメなんだな。
キスしたりはもう、散々しちゃったから、断れないだけかもしれないけど。
先輩が嫌じゃないんだっていう、そこが、最重要なポイントで。
嫌じゃないならもうあとは――――……。
オレがどんだけ好きか、ってことにかかるのか……。
「……恋人を保留するのは、了解です」
「――――……」
「もっと変なこと言うかなーと思ってたから。まあまあ、普通でした」
「――――……もっと変なことって?」
「もっと、オレに考えもつかないような、変なこと言ってくるかなって」
そう言ったら先輩は、なんだろ、と不思議そうな顔をしてる。
まあ。今のだって十分、色々突っ込みたい事はあるんだけど。
――――……でも。
オレの事、考えて、気にしてるのは、なんかほんとに、先輩っぽい。
すぐに決められないのも、先輩の側の話じゃなくて。
――――……オレが本当にそれでいいのかって、考えてるらしいし。
それなら。
少し時間置いて。オレが本当にそれで良いって思ってること、
分からせればいいんだよな。
「それを経て、ちゃんと付き合ったら、もう本気でずっと一緒に居るとか真剣に考えてくれるって事でいいですか? 適当に勢いとかじゃなくて、ちゃんと考えて、付き合ってくれますか?」
最後にそう聞いたら、先輩は、ちゃんと頷いた。
よっしゃ、て気分なのに。
「三上、怒んねーの?」
とか聞いてくる。全く怒る理由が分からない。
「……何をですか?」
全然分からなくて、しばし沈黙の後、そう聞いたら。
「好きだけど、今無理とか……」
そんな風に言ってくる。
――――……なんか。ほんと可愛い。
オレが怒ったらどうするんだろう、と興味があったけど、怒る気には全然なれなくて。困った顔が可愛くてしょうがないし。
「怒るとかそういう事じゃないですけど」
「――――……」
「むしろ、真剣に考えてくれてるんだなーと思うから、今簡単にオッケイ貰うより、嬉しいですけど」
笑顔で言うと。
先輩、ものすごくほっとした顔をする。
なんだかなあ。
オレの事考えて、好きに行動してもいいよとか言っちゃっといて。
でも、好きなのに無理とか言ったら怒るかなーとか心配したり。
怒んないって伝えたら、こんなほっとしたり。
――――……なんか。
この人、ほんと可愛いんだけど。
やっぱりすぐにでも付き合って、と言いたいけど。
――――……とりあえず、なんか、この京都の地に居る限り、旅行気分のノリだと思われそうで無理な気がして。
しょうがない。
もうあとは、東京に帰ってからだ。
――――……でも。
それでちゃんと、認めてくれたら。
先輩と、付き合えるかもしれない。
内心ワクワクしながら、先輩を見てると。
「……変な奴……」
とボソッと言われた。
は? 何で?
苦笑いしか、浮かばない。
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