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第127話◇side*陽斗
――――……ん……。
く……首、痛い……。
ゆっくり、首の右側に手を当てる。
一瞬だけ、ここがどこか考えて、あ、新幹線だ。 あれ、三上は?
そう思ったら。
三上も、隣で寝ちゃってて。
至近距離の整った顔に、一瞬ドキ、とする。
――――……んだよ、ドキって。
と、思った瞬間。
手が、繫がれてることに、気づいた。
何してんの、こいつ、と焦ったら。上着がかかって見えないようになってるのにも気づいて。――――……何度か瞬きして、落ち着いて、また背もたれに背を沈めた。
とりあえずこのまま。……起こしちゃいそうだから。
今、どこだろ、20分経ったら起こしてとか頼んだけど、経ってないのかな。時計は手を繋いでる左だから、見えないし。
まーいいや……。
そんなに長時間寝た感覚は無いから、まだ着かないだろうから。
少しだけ下から、三上を見つめる。
ほんと……整ってんなあ。顔。
――――……今まで、オレの態度がひどかったから、ずっと無表情だった、三上の顔が、この週末で、ものすごい、優しく緩むようになった。
ほんと。
モテるだろうなー、こいつ。一緒に居て、すごく、そう思った。
……オレに迫る期間って……。
そういう事、言わせたくて言ったんじゃないんだけど……。
――――……なんかほんと……オレ、三上が好きなんだよな。
……話せば話すほど。
まっすぐなセリフに、惹かれる。
何でこんな、バカみたいにまっすぐなんだろ。
三上が、他の子を見て、やっぱり女の子が良いってなったら、やっぱりそうだよなって言ってあげたいと、本気で思ってるんだけど。
――――……三上を好きだなと思う度……。
ずっと、三上と居る未来って、あるのかなって、想像してしまう。
なんか――――……。
…………三上は、惚れさせるとか、言ってたけど。
もうすでにそんなの……。
じゃなかったら、キス、しない。
――――……抱く方ならまだしも。
――――……抱かれる方なんて。……好きじゃなきゃ無理だし。
はー。
でもな。
今だけのこと考えて受け入れるなら、すぐにでも受け入れるけど。
……うまくいくのかな。男同士。
――――……てよりは。
うまくいって、いいのかなあ。
……って方が、近いか。
三上と居ると、楽しくて。穏やかで。なんかドキドキもするし。
……キスしたりするのも、いいし。
……抱かれるのも。信じれない位、良かった、気がする。
うまくいきそう、なんだよなー……。
今のまま、オレたちが、付き合うなら。
だけど――――…… うまくいっちゃって、いーのかな?
ってのが。
……頷けない理由。
これ言ったら。
良いに決まってるって、三上は言いそうだけど。
――――……うーーーん。
男同士って。
……やっぱり、そんなに簡単じゃない、と思う。
別に周りには話さなければ良いかもしれないけど。
家族には、後ろめたくなるし。
……彼女や奥さんとか子供とか、持ちたいって思う日が来たらどーすんの。
そん時、すげえ関係が深くなってたら。
ほんと、どーすんの。
そん時、素直に引けるかなあ……。
それ位なら、今、始めずに。
どうにか――――……仲が良いまま、普通の関係で付き合っていけた方が、楽しいかも。とも、思ってしまう。
のだけど。
――――……なんか、こうして寝顔、見てると。
すごい、ドキドキするって。
はー。
どうしたら、いいんだろう。
こんな好きとか嫌いとか、恋関係の事で、こんな年になって、
いまさら、悩む日が来るなんて、思わなかった。
金曜までは、そういう気になれなくてなんだかなーって、そっちで悩んでたのにさ……。
よくも、2日で、こんなにオレの中、変えてくれてさー……。
悩むのが久しぶり過ぎて。
――――……どうすべきか、ほんとよく分からない。
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