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第128話◇笑顔。
【side*蒼生】
「――――……?」
……オレ、寝てた?
目が覚めて、ゆっくり視線を先輩の方に向けたら。
先輩はすっかり起きてて、あ、とオレを見た。
繋いだ手は、解けていて、上着もオレだけに掛かっていた。
「……あ。すみません、起こすって言ったのに」
「全然いいよ。つか、最初寝たのオレだし」
クスッと笑いながら、先輩はオレを見る。
「良く寝た?」
「ん。なんか結構、ぐっすり。先輩は?」
「首痛くて目が覚めたんだよね。――――……でも、すっきりしてる」
そっか、と返事をして、少し体を伸ばした。
「なんか、体固まってるんで、トイレまで歩いてきますね」
「うん」
ふ、と笑って見上げてくる先輩に笑い返しながら、ドアを開けて、トイレに向かう。
体痛って……。
腕や肩を回しながら、進む。
トイレを済ませて出た所で、小学生くらいの男の子がウロウロ歩いてきた。
「トイレ探してる?」
「あ、うん」
「ここだよ。 たまに揺れるから気を付けて」
「うん。ありがと!」
はは。可愛い子だな。
3、4年生位ってとこかな。
そんな事を思いながら、席に戻って、先輩の隣に座ると。
「なんか笑ってんな? どしたの?」
先輩がオレを見て、ぷ、と笑う。
「あー……なんか今、小学生がトイレ探してて、少し喋ったんですけど」
「うん?」
「トイレここだよって教えてあげたら、超笑顔で。……なんか、先輩がちっちゃい頃ってどーだったのかなーなんて思ったら、つい笑っちゃいました」
「オレのちっちゃい頃……?」
「どんな小学生でした?」
「んー……学校ではドッジボールばっかで、放課後と土日はサッカーばっかしてた」
「へー。ちょっと意外。腕白だったんですか?」
「だったよ。サッカーしてたから真っ黒だったし」
「なんか真っ黒、想像できませんね」
今、めっちゃ肌綺麗だけど。
「中学からはバスケに入ったからさ、室内になったから、真っ黒だったのは小学生までだよ」
懐かしそうに笑う。
「モテました?」
「モテたと思う?」
「うん。モテるでしよ、絶対」
オレがそう言うと、先輩は、ぷ、と笑って。
「モテてないよ。オレ男子としか喋んなかったし。サッカーやってた女子とは喋ってたけど……男子みたいな女子ばっかだったし」
そう言う先輩にちょっと考えて。
「……バレンタインとかは?」
「んー。バレンタイン? ……なんか女子がグループで持ってきたりしてたけど。別に……?」
「グループで? 家に?」
「……うん、家に。でも別に個人的に貰った訳じゃないし?」
……先輩が女子としゃべんない人だったから、グループでもってくしかなかったんじゃねーのかな。
うん。はは。モテてたな。絶対。
多分ここにツッコんでも、否定というか、きっと分かんないんだろうなーと思いながら、1人納得していると。
「お前は? 小学生んとき」
「オレも小学生ん時はサッカー。近くのグランドで、水曜と土日。公園でもサッカーって感じでしたね」
「そうなんだ。あ、三上は、モテた?」
「んー。まあ。モテた、かなあ。まあ、背ぇ高かったし、足速かったし。小学生ってそれだけでもモテるでしょ」
「ああ、そーだな。 一番モテる理由だなー」
クスクス笑いながら、先輩がオレを見る。
「でもまあオレも、女子とか遊んだりしないタイプでしたよ」
「……ふーん?」
「ほんとですけど」
「……ふうん?」
「なんですか?」
「三上の慣れっぷりが、もう、女子としゃべんないとか、ありえない」
笑って言われると、がく、と崩れそうになる。
はー、とため息を付きながら。
「あ。今度先輩の子供の頃の写真、見せてくださいよ」
「え。やだよ、なんか恥ずかしい」
速攻断られる。まあそうだと思って、言ったけど。
「絶対可愛かったと思うんで、見せてください?」
「……小学生のオレを、すげー可愛いって言われても、なんかやだし」
「――――……」
むー、と困り顔でのそんな言い草に、ぷ、と笑ってしまう。
「じゃあオレのも見せるから、交換てのは?」
「うーーーーーん…… 三上の見せてくれたら考えようかなー」
「……ていうか、オレは、一番恥ずかしい写真みせましたよね?」
「ん?」
「高校時代の……」
そう言うと、先輩はクスクス笑って。
「あれは、結構カッコよかったよ?」
本気なのか分からないけど、そんな風に言って、先輩はオレを見て、楽しそうに笑ってる。
先輩が笑ってると。
――――……ほんと。嬉しい。
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