132 / 274

第132話◇一緒に朝食

 昨日は寝る前まで先輩と話してて。  そのまま、眠りについた。  朝起きて、出社の準備をして、何だか自分でも浮かれながら家を出る。  駅前に近付いて、どこら辺に居るか聞こうとスマホを出した時。先輩を発見。  昨日もスーツは着ていたけれど、ネクタイは外してたし、上着も脱いで崩して着ていたから。やっぱりちゃんと着てると。  ほんと、清々しい位に。――――……なんか綺麗。  ……まあ普通の人は、格好いいって言うんだろうけど。 「先輩」  声をかけると、スマホを見ていた先輩が顔を上げて、オレを見て、笑顔になる。 「――――……」  あー。なんか。  旅行先での笑顔はちょっと特別で。  普段の生活に入ったら、笑ってくれないかも。とか。  実は少しだけ、心配してたんだけど――――……。 「おはよ、三上」  先輩の笑顔は、変わらなかった。  多分。会社の中に入ったら、少し変わるんだろうけど。  なんか、すげえ嬉しいかも。 「外で会おうって言ってくれて、ありがとうございます」  思わず言ったら、先輩は、ん?とオレを見て、何それ、と笑う。 「三上、あっち。いこ」  先輩の隣に並んで、歩き出す。  店はすぐ近く。広い通りから一本入った所だからか、そこまでは混んでない。広めに座席が取ってあって、いい雰囲気。  サンドイッチとコーヒーを頼んで、先輩と向かい合う。 「電話切って、すぐ寝ました?」 「もう、一瞬だった」 「じゃあ良く寝ましたよね」 「ん」 「旅疲れないですか?」 「無いよ。一応あれ、出張だけどな?」 「はは。でも金曜の夕方以降は完全に旅行でしたけど」 「まあ。そーだな」  先輩はクスクス笑いながら、時計を確認して。 「オレもちょっと早かったけど、三上も早かったから……ゆっくりできそう」 「めっちゃ楽しみで、早起きでしたから」  そう言うと、先輩は、クスクス笑う。 「三上って、いつも朝ごはん、作ってんの?」 「外出るのめんどいんで、軽く作る……という程でもないですけど」 「へー。何を?」 「パンと卵とハムとかとコーヒーとか? そんな感じですけど。帰り道にあるパン屋でパンを買って帰る事も多いかも」 「へー」 「先輩はここによく来るんですか?」 「うん。朝余裕があったら、ここに来てる。無い時は、パン焼いて終わり」 「じゃあ、オレもここ来ます」 「――――……いつ来るかわかんないけど」 「7時半迄に連絡ください。いつでも行けるようにしとくんで」  そう言うと、先輩は、いつでもって……と笑う。 「いつでも、じゃないよ? 余裕ある時だけだし」 「んー……まあ……オレんちで、一緒に、でも全然良いんですけど」 「――――……」  先輩は、また、マジマジとオレを見つめて。  それから、ちょっと嫌そうに眉を寄せて。 「それ、会社で言ったら、アウトだからな……」  と、言ってくる。 「分かってますよ。――――……会社では言いません。だから、会社以外で、オレとの時間、下さいね」 「――――……」  またまた黙って、見つめられていると。  店員が、食事を持ってきて、並べて行った。 「おー、うまそう。いただきます」  コーヒーに口をつけると。  イイ香り。 「コーヒー、イイですね。美味しい」 「だろ?」  嬉しそうに笑いかけて。  先輩は、あ、と気づいたみたいに、笑いを引っ込めた。 「三上、さっきのも、会社で言わないで。ていうか、もう、全部怪しいこと何も言わないどいてよ。オレきっと、変な反応しか返せないから」 「――――……オレとの時間取って、って? 別にあれ位、良くないですか? 人の前では言わないですよ?」  クスクス笑いながら聞くと、先輩は、はーと息をつきながら、コーヒーを飲んで。それから、じっとオレを見つめてきた。 「三上は多分、平然と色んな事言って、ほんと平然としてて誰にも悟られたりしないんだろうけど――――……オレ、絶対迷惑かけると思うし」 「ストップ」  思わず、止めてしまった。 「また変なこと言ってますよ。――――……オレが平然とちょっかいかけてまでは良いですけど。それで先輩が可愛い反応して、たとえ周りにバレたって、それオレに迷惑かかるとかいう話じゃないですからね。 ていうか、完全にオレのせいじゃないですか」  言ってる内に可笑しくなってきて、笑ってしまう。

ともだちにシェアしよう!