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第133話◇今日の目標

「あのさ、先輩。……先輩と付き合える事になったら。オレ、先輩が良ければ、先輩と付き合いますって会社の人に言っても全然良いですよ」 「――――……」 「ただ営業先にまで広まるとちょっと面倒かなーって思うから、営業から異動させてもらえるかなとか、思っちゃいますけど。――――……多分オレ、ずっと営業には居ないと思うし」 「――――……まあ、営業にはきっといないんだろうけど……」  しばらく無言で。 「え。待って、そういう話……? 何かよくわかんなくなってきた」  先輩が混乱したみたいな顔で、オレを見つめてくる。  ぷ、と笑ってしまう。 「オレが迫ってんのに、なんか……迷惑かかるとか、意味わかんないですって話です」 「――――……」   先輩は相変わらず混乱してたけど。   「とりあえず食べましょう?」  そう言うと、頷いて食べ始める。  少しの間黙って食べていたけど、ふと思いついた。 「あ、先輩」 「ん」 「部長んとこ、出張の報告に行きますよね?」 「うん。行く」 「朝イチ、一緒に行きましょう?」 「――――……」 「なんかバラバラに行って、下手に嘘ついて、辻褄合わなくなったら困るでしょ? オレ絶対変なこと言わないですし、合わせますから」  そう言うと。  サンドイッチを口に入れながら、んー、としばらく考えた後。 「――――……あー……うん。じゃあ、頼む」 「はい」  頷いて、ふ、と笑む。 「先方とは無事話がついて、後は楽しく京都旅行してきちゃいましたって事で良いですよね?」 「ん。ていうか、オレが言うから」 「分かってますよ」 「……なんか。変なの。こういう話してると、三上のが先輩みたい」  苦笑いの先輩は、コーヒーを啜りながら。 「……経験多そうだもんなあ、色々。……三上が狼狽えるとこ、見たいなー」 「――――……」  なんか先輩の少し面白くなさそうな顔に、苦笑いしか浮かばない。  つか。オレ、先輩の言動に、かなり狼狽えまくりだけど。  なんなら昨夜、先輩と電話する直前と出る時のオレとか。かなり間抜けに狼狽えてたけど。  ――――……ほんと、顔に出ないなあ、オレ。  得なのか、 損なのか、ちょっとよく分かんねえ。  今までは得だと思ってきたけど。  なんか先輩と相対する時に、いっつも落ち着いてて、平然としてるとか見られるのは、損な気がするんだよな……。  すげー好きって、全面に出したい位だけど。 「……先輩、今日はデザート食べないの?」 「――――……毎日食べないってば。しかも朝から」 「昨日も一昨日も、デザート、午前中でしたけどね」  クスクス笑うと、先輩は、ふ、と笑って。 「旅行だから特別」  なんて、言う。 「先輩が甘いもの食べてるとこ、すげー可愛いから、毎日見たいけど」 「――――……」  オレの言葉を、先輩が理解したらしい瞬間に、カッと赤くなって。 「……っなことしてたら、確実に肥えるからな、オレ」  照れ隠しっぽいことを、なんか、焦ったみたいに言ってくる。  ――――……可愛いなー。なんて、思いながら。 「いいですよ、大分肥えても平気じゃないですか?」 「っ嫌だっつーの!」 「少し丸くなっても、全然可愛いですよ」 「……バカなの、お前」  ……あ。ふざけすぎた。  冷たい目で見られ、苦笑い。 「可愛いとか、もうそういうの、ここからほんとに一切、禁止だからな」 「はーーーい」 「短く返事しろよ」 「――――……はい」  返事しながら笑ってしまうと。  先輩はますますむー、と眉を寄せる。 「夕飯、一緒に食べてくれますか?」 「――――……三上が、会社で一度も変なこと、言わなかったら」 「……っと。 すげー反撃……」  んー。と考えて。 「分かりました。約束ですよ?」 「一度もだからな?」 「はい」  なんか金曜からこっち、先輩をからかって遊ぶ……とか言ったら怒られそうだけど。  それに慣れてて、少し心配だけど。  先輩との夕食の為だ。  そう思って。とりあえず今日は1日、頑張る事を、決めた。

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