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第141話◇最高からの最悪
「いただきます」
2人で言って、昼食を食べ始める。
出てくるのが遅かったからか、食堂はわりと空いてて、誰も居ないテーブルに2人で座った。
「先輩、午後は外に出るんですか?」
「いや。出ないよ」
「じゃあ、何時頃帰れるかとか、分かります?」
「んー……午後なんか飛び込んでこなければ、18時位かなあ」
「じゃあオレもそれに合わせて頑張る事にします」
「――――……うん。分かった。あ、でも三上さっきのギリギリだからな」
「え?」
「ていうか、すでにアウトな気がするけど」
「……ああ、さっきの……? 無しにしてください。もう言わないんで」
「…………次言ったら、ほんとにアウト。オレまっすぐ帰るから」
「はい」
――――……とか言って、オレ、結構ちょくちょく、色んな事言ってるけど。なんか先輩、結局許してくれるし。
アウトとか言いながら。
ほんと。
可愛いなあ。
なんて、思ってしまう。
「ねえ先輩、今度美味しいスイーツの店も探しとくんで」
「ん?」
「一緒に行きましょ?」
そう言うと。
先輩は、ご飯を口に運びながら、ふ、と笑った。
「…三上あんまり食べないじゃん」
「少しずつ食べますし」
「――――……んー」
口の中のご飯を飲み込んでから、先輩はにっこり笑った。
「いいよ。三上と行くと、2種類食べれるし」
「2種類でも3種類でも食べればいいのに」
「――――……つか、太るってば、オレ。何、太らせたいの」
「そうですねえ……」
「太らせて食う気かよ?」
先輩は言って、可笑しそうに笑う。
「――――……」
冗談だって。軽口だって分かってる。
先輩、何も考えてない
でももう。言いたいから言おうかな……。
「――――……別の意味なら食いたいですけどねー」
言った瞬間。先輩が、思った以上に、ぴし、と固まった。
ああもう面白ぇ。笑ってしまいそうになる。
「あ、すみません、今のも無しで」
「三上、ほんとに、おま――――……」
顔赤いし。なんかもう、プルプルしてる。ように見える。
もう、可愛いしか、でてこねーけど。
「あーそうですね、すみませんでした」
「……っ」
怒ってるのか、黙って睨まれるけど。
「夜、何にしましょうかね?――――……ね、先輩」
じっと見つめてると。
――――……先輩は、大きなため息とともに。
「……もー三上が決めろよ」
かなり嫌そうに、そう言う。
――――……でも。行かないとは、言わない。
やっぱ、可愛い。
「……じゃあ、お酒は? 先輩、普段どれくらい飲む人ですか?」
「……どれくらいって?」
「週何回くらい?」
「1人だとそんな飲まないよ」
「じゃあ今日は飲まない?」
「んー、でも、三上が居るし、少し位飲んでもいいよ」
そっか。
――――……んー。
「オレの友達の店、行きますか?」
「ああ。連れてってって言ったとこ?」
「あそこなら酒美味いし。少し飲んで――――……あ」
うわ。最悪。
先輩越しに、目に入ってきた奴に、自分の顔が歪むのが分かった。
「三上?」
先輩がすごく不思議そうな顔をしてオレにそう言いながら、後ろを振り返った。
「あ。――――……志樹」
先輩の声が、ちょっと、低くなった気がする。
つか。社食なんか来るなよ。
いいとこで、ランチでも食ってろっつの。
馬鹿兄貴。
オレはまだ、会ったら言いたかった事が 山ほどあんだよ。
なのに。
――――……会社では、兄弟なのは内緒だから、ここじゃ何も言えねーし!
兄貴は、辺りを見回して、やばそうな奴は近くに居ないと判断したのか。
先輩の隣に、腰かけた。
はー。
……邪魔だし、ニヤニヤしてて、ムカつくし。
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