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第149話◇兄貴対策
祥太郎の視線を感じつつも、とりあえず無視を決定。
メニューを先輩に差し出す。
「先輩、何飲みますか?」
「生」
「食べ物は?」
「オレ何でも良いから、食べたい物適当に頼んで?」
「ん、了解です」
オレが適当に注文を済ませると、先輩は、ありがと、と笑う。
「な、志樹の事なんだけどさ」
「はい」
ああ。早速それね。
……適当に頼んでとか言うから、きっと何か考えてるんだろうなとは思ったけど。
「三上は、本気で、どこまでバレても平気?」
「本気で、全部イイですよ」
「……本気で、良いの?」
「別に兄貴に隠すような事は、無いです」
そう言うと、先輩は、んーー、と唸ってる。
「……お前って、すごいよな」
「すごいっていうか……兄貴に、どう思われてもいいかなってだけで」
「……そうなんだ」
苦笑いの先輩。
「オレはほんとどうでも良いんで、任せますけど、先輩が兄貴に話すのは嫌なんだろうなっていうのは分かるので……」
「――――……」
「……こういうのは?」
「ん?」
「オレと付き合う事になった、て事にするとかは?」
「え?」
「迫られてそうなった、以上……ていうのが一番話すの楽じゃないですか?」
「以上、で済ませてくれるかなあ……」
「でもって、そのままほんとに付き合ってくれたら、オレは嬉しいですけど」
「――――……」
オレの言葉に、先輩はマジマジオレを見て、苦笑い。
「まあ。最後のは希望ってだけですけど。でもマジな話、全部そのまま話すのって、恥ずかしくないですか?」
「…………死ぬほど恥ずかしいかも」
がっくりと、肘をついた手に、顔を沈めてる。
苦笑いしか浮かんでこない。
「……でも、志樹に嘘ついても無駄だって気がするから、聞かれた事には素直に答えようかなって思ってるんだけど……」
「んーじゃあ――――……オレが先に話しますか?」
「……志樹と? 三上が?」
「はい」
「――――……」
先輩はしばらく考えた後。
「絶対無理」
と首を振った。
「だって、てことは、志樹が色々知った所に、尋問されに行くって事だろ? 嫌だ、それ、絶対無理」
「――――……尋問って……」
笑ってしまう。
……さすが。
――――……兄貴のことも、なんか、色々分かってそう。
自分がモテる関係には、どーしてあんなに疎いのか知らないけど、それ以外の人を見る目とか、周りを見渡すとか。そういうのはすごいもんな……。
兄貴とは仲は良いけど、あの底の知れない感じも知ってるって事で。
………まあ、兄貴と先輩みたいに深く一緒に仕事してれば、嫌という程知るか……。
「それより先輩」
「ん?」
「……兄貴に、男ととか、知られていいんですか?」
「――――……」
「ほぼバレてる状況だったとしても、確実に頷かない限りは100%ではないから。もうこの際、認めなきゃいいのかなとも思うんですけど」
「――――……」
嘘を吐くって訳じゃなくて、曖昧にぼやかしたまま突き進むとか。
先輩の精神の安定のためには、それもありかなぁとも思うんだけど。
「ほぼバレてる状態で、認めない……?」
先輩は、眉をひそめて聞いていたけれど、うーん、と唸りながら首を傾げた。
「……オレが志樹にそんな事、できる気、しない」
はっきりきっぱり。先輩はいう。
「先輩って、兄貴、すげえ仲いいです?」
「仲いい……でも、学生の時の友達とは少し違うよ? 仕事を挟んで。でも、色んな事、話はしてるけど……志樹って色々不思議だよね? 謎なんだよね。まあ面白いんだけどさ」
「……そうですね」
「弟でも思う?」
「弟だから余計、じゃないですね。オレは面白くはないです」
オレが眉を顰めながらそう言うと、先輩はおかしそうに、クスクス笑う。
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