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第150話◇触ったから知ってます。

「つかさ、先輩。オレと付き合わない可能性も、あるんですよね?」 「――――……?」  先輩が不思議そうな顔で、オレを見つめてくる。 「今オレ、返事待ちでしょ。先輩がどうしても無理だってなったら、オレら付き合わないって可能性もあるのに」 「――――……」 「無駄に兄貴に知られない方が良いなとは思わないんですか?」 「無駄……?」  先輩はしばらく、んーー、と考えていたけど。 「……でもじゃあ、何も無かったって、言うのか?」 「――――……それだと嘘ついてる事になっちゃって、先輩がまた悩みそうだから……例えば、もうちょっとはっきりしたら話す、とか?」 「……聞かれなかったら言わないかもしれないけど……。でも、聞かれたら曖昧にとかは出来なそう。……三上が嫌じゃないなら、話した方がいいかなって思うんだけど……」 「――――……それで先輩は、いいんですか?」 「……つか、何でダメなの?」  先輩はオレをじーっと見つめてくる。 「……オレと付き合わないって決めるなら、男と関係があるとか兄貴には知られない方がいいと思いません?」 「――――……だって、その時点では、そうなった理由もあったし、完全に合意だった……よな?」 「え?」 「合意……だったろ??」 「え、それは、当たり前……」  ていうか、オレ、した方だし。合意も何も……。  ――――……と、なんか、すごくおかしい。 「……合意でやったこと、否定してもしょうがないじゃん。ていうかさ」 「?」 「なんか、そういうのは、無駄とか言わないし」 「――――……」  どうこたえようかなと思っていると。  先輩は、オレを、見上げてくる。   「……あーもう……三上って、ほんとに、オレと付き合いたいの?」 「うわー今更。何言ってんですか?」 「――――……お前と話してると、おかしくなりそう」  はー、と深い深い、ため息をついてる。 「――――……オレ、男だよ?」 「……触ったから知ってます」 「……っ」  なんか、あまりに今更な事を言ってくるので、絶対そうなるだろうなと思って言ったけど。  先輩は、みるみる真っ赤になった。    ――――……あーもー…… ほんと、可愛いな。 「つきあってくださいよ、いますぐ」 「――――……」 「そしたら兄貴にも言えますよ。 付き合う事になったからそうなったって」  何か、すごく困った顔してる先輩に、クスクス笑ってしまう。  こういう話してる時。   嫌だ、とは言わないんだよな……。 「とにかく、色々思う事あるけど……志樹と話さないと、無理。なんか全部、志樹と話してからにしないと……許可、出ないかもしれないし……」  ……許可?  ――――……兄貴の許可? オレと付き合う許可?  オレ、兄貴の許可なんか、全く要らないんだけど。  首を傾げてしまう。

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