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第151話◇幼く見える

「先輩、オレは兄貴の事なんか、どーでもいいんですけど」 「――――……」 「まだオレ、この2年間のことめっちゃ文句言いたいし」  そう言うと、先輩、ものすごい苦笑い。 「それに関してはオレも引き受けたし、何も言えないから……」 「先輩はもー良いです。惚れた弱みっつーか、もう完璧許してるというか、何とも思ってないです。元凶は兄貴です」  オレの言葉に、先輩はオレをじっと見てから。 「……一応、志樹も、お前の事思ってたんだと……」 「あれはね、先輩。オレを思ってたんじゃなくて、オレの気持ちを無視して、ただひたすらに仕事を詰め込みたかっただけです」 「……だから……認められてるだろ、三上。今。部長とかもよく褒めてるよ」  ふ、と先輩が笑う。  ――――……うん。今、先輩がそうやって認めてくれてるのは、  ただ、ひたすらに嬉しい。  けど、兄貴のおかげとは、言いたくない。 「それになんか、許可とるとか、オレはオレの事だから、そんなことしなくていいですよ」 「でもさ。オレ元々、志樹の方が先に知り合って、友達な訳じゃん……?」 「そんなに兄貴の事、気になりますか?」  むー、とため息を付いていると。 「え。何その質問」  先輩がキョトンとしてオレを見る。 「オレとの話でしょ? 兄貴、どーでもいいですって」 「――――……別にオレ、志樹の方が大事だとか、そんなこと言ってないよね?」 「そうですけど……」 「……なんか三上、よく分かんないけど……」  ぷ、と先輩が笑う。 「妬いてるんなら、全然違う話だけど……」 「――――……」  ……え、オレこれ妬いてんの?  いやいや、むかつくだけで……。  何だかよく分かんなくなってきた所で、先輩はうーん、と考えながら続ける。 「許可って言っても……許可って言い方がいけないのか。とにかく、一応話、通さないとって、思うんだけど……違う?」 「――――……」 「兄貴の方と先に友達でさ、例えばその後、妹ともしかしてって時だって、普通に話すよね?」 「――――……まあ」 「それと一緒なんだけど……でも、弟だし、付き合う前に色々……っていうのが」 「……まあ分かりますけど」 「しかもなーマンツーマンの後輩……」  と言いながら、先輩は、オレをじっと見つめてくる。 「なんかオレ、志樹に話すのが一番きついかもな……むしろ部長とかなら言えるかも。あ、そーなんだって言ってくれそう」  めちゃくちゃ苦笑いで、先輩が言う。  ああ、部長。確かに言いそう。へらへら適当な感じするもんな。  ……何で部長なんだろ。まあ。仕事ン時は人変わるか……。  ……兄貴って、先輩にとって相当強敵か。 「あ。先輩、次何飲みます?」 「なんか甘いやつが良い」 「祥太郎に任せていいです?」 「うん」 「了解です」  立ち上がって、祥太郎の所に近付く。目の前の椅子が空いてたのでそこに座った。 「祥太郎、なんか甘いの、2種類作って」 「了解ーていうかお前も甘いの?」 「先輩に好きな方あげるから」 「――――……はいはい」  呆れたように笑ってから、頷く。  グラスを出して来て酒を作りながら、祥太郎がオレを見てくる。 「――――……好きなのは、分かった」  祥太郎が呆れたように笑う。 「チラ見してるだけでも、駄々洩れすぎ。見つめすぎ。笑いすぎ。お前、バレても良いと思ってんだろ」 「んな事いっても今、他に誰もオレら見えるとこに居なかったし。会社だともう少しは隠してたぞ」 「つか、オレは居たけどな」 「お前どーでもいい」 「お前なー……」  祥太郎は、苦笑いしながら。 「つか、デカい会社なんだからなるべくバレない方が良さそうだからな。そっちは気をつけろよ?」 「分かってる」  返事をしながら祥太郎の手元を見ていたら。 「――――……あの人は、志樹さんと来てた時とは大分雰囲気違うな」  そんな風に祥太郎が言い、オレは、首を傾げた。 「……そうなのか? どう違う?」 「んー……なんか、お前と居ると、幼く見える」  ……ああ、なんか。ちょっと分かる気がする。  オレと居る先輩、たまにすげー可愛いもんな。    

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