155 / 273
第155話◇ side*陽斗 2
「何て呼べばいいですか? オレが先輩て呼ぶの変ですよね」
三上を挟んで、3人で座る。
グラスを合わせてすぐ、そう言ってクスクス笑われた。
「あ、渡瀬だよ」
「じゃあ、渡瀬さん、で」
「うん。祥太郎、君?」
「は? だめ。中原です、こいつ」
三上がいっつも祥太郎としか呼んでないから、祥太郎君でいいのかなと思って口にしたら。即座に三上からダメだしと名字が飛んできた。
「何でオレが三上なのに、こっちが名前なの。おかしいでしょ、先輩」
ぶつぶつ言ってる。
最初、ぷ、と笑いそうになったけど、はた、と気付く。
――――……ていうか。これって。
「……三上、何か、中原君に話した?」
「え」
「――――……」
だって、今の、おかしいじゃん、普通。
名前呼びにそんなに引っかかるとか。
じっと見てると。
「……祥太郎には、話しとこうと思って」
「――――……」
どこまで、話したんだろ。
……やっぱり、ちょっと恥ずかしいかも……。
聞くに聞けず、止まってると。
「――――……オレ2年間、渡瀬さんへの愚痴、聞いてたんで。一緒に店に来た時点で、は?て感じで。 話さざるを得なかった感じですよ。ていうか、オレ偏見はないんで、大丈夫ですよ。あとは、渡瀬さんが迫られてるって所で終わってます」
三上のかわりに、中原君がそう言った。
――――……2年間、愚痴聞いてた。
ちょっとずき、と胸が痛い。と思った瞬間。
「お前さらっと余計な事言うなよ、バカ」
三上が中原君にそう言った。
「はー? 事実だろうが」
「あれは、先輩、違いますから」
「いい、大丈夫」
まあ、しょうがないとも思ってるから。
なんか三上は焦ってるけど。
そしたら、中原君が笑い出した。
「愚痴ってましたけど、結局何が嫌なのか分からなくて、ついこないだも、いつも愚痴ってるけど、結局何なのかわかんないって言ったばかりで。ただ単に、優しくしてもらえなくて拗ねてただけだと思うんで。その程度の愚痴ですよ」
「お前、それもフォローになってねえからな」
三上はじろ、と中原君を睨んでる。
えーと。
……優しくしてもらえなくて拗ねてたって……。
……なんか。胸が、きゅんとしてしまう。
ヤバいな、オレの、この反応。
明日から、今日よりももっと優しくしてしまいたくなってしまうんだけど。
「さっきから少し見てたんですけど」
「うん?」
「蒼生ってもしかして、渡瀬さんに、めちゃくちゃ甘々だったりしますか?」
「――――…………」
めちゃくちゃ、甘々……って。
じっと見つめられて。
理解した瞬間、めちゃくちゃ恥ずかしくなって、思わず視線をそらしてしまった。
ともだちにシェアしよう!