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第156話◇side*陽斗 3

「渡瀬さん?」  視線を逸らしていたら、中原君に呼ばれて、どうしようかと思っていたら。 「いーから。……つか、何なんだよ、甘々って」  なんて、三上が言ってる。 「……だって、お前、すげー甘々っぽい感じで渡瀬さんの事見てるし」  ……確かに三上はずっと、そうだけど。  「そうだよ、甘々だよ」なんて。三上の友達に言える訳ないじゃんかー。  三上、お前の友達をどーにかしてくれ。  三上に全てを任せて、オレは黙っていると。  中原君が言う事には。 「こいつ、基本、そういう相手への対応冷たい奴なんで、あんな感じのこいつ、初めて見たというか」 「え?」  オレは、目を逸らしていたのも忘れて、中原君を見返してしまった。 「え?って」 「先輩?」  2人に、不思議そうな顔をされてしまったけど。 「三上って、基本冷たいの?」  オレがそう聞くと。目の前で2人がぷ、と笑った。 「まあ確実に、こいつは甘々ではないです」  中原君は笑いながらそう言う。  三上はものすごく嫌そうに、中原君を見てから、オレを見る。 「先輩、聞かなくていいですよ」 「こいつね、渡瀬さん」  三上のセリフは無視して、中原君が話し始める。オレが、うん、と返して、聞く気なのが分かったのか、三上は諦めたような顔をしながら、グラスを傾け始めた。 「こいつ昔からすげーモテたんですけど。大体女の子達がもう良いって諦めて離れて行くパターンで、でもって追わないし」 「――――……」 「そんなの知られてても、私が振り向かせるっていう女子が競って告って、でも結局ちゃんと付き合う前に、終わるみたいな……そんな感じだったんですよね……」  なんか。なかなかにすごい感じの事、聞いてるような。 「――――……そーなの? 三上」 「……まあ…… そう。かなあ……?」  苦笑いで、でも否定はしない。  ……何か、でも、オレの前に居る三上は、全然違うんだけど……。  ……恥ずかしくなる位、優しくて甘いけど。 「――――……なので、渡瀬さん」 「……あ、うん?」 「今、オレのこのセリフが疑問なら。蒼生は、相当渡瀬さんに本気なんじゃないかと思うんですよね」 「――――……」 「オレ、蒼生との付き合い、結構深~くて長いんですけど、こんな嬉しそうに誰かに構うとこ、見た事ないというか」 「……つか、お前そろそろ黙れ、仕事戻れ」  三上が突っ込みながら、中原君の酒をトレイにのせながら、帰そうとしている。 「オレはお前の後押しをしてやってるっていうか」 「いーから、もう。仕事戻れ、さぼるな」 「……ち。はいはい」  中原君はため息を付きながら、立ち上がる。 「じゃあごゆっくり。あ、渡瀬さん、何か聞きたい事あったら、どうぞ何でも」 「ん。ありがと」  持ってきたトレイに自分のグラスを乗せて早々に戻って行った。   「――――…………」  短い会話だったけど色々思う所があって、しばらくじっと、三上を見つめていると。   「えーと……」 「――――……」  三上が、オレの視線に超苦笑い。 「……オレ、確かに、あんまちゃんと付き合わず遊んでましたけど……それは本気になってなかったってだけで……」 「ん??」  何の話を始めた?  オレが三上を見つめて、首を傾げたら。 「……ん?」  三上はオレの顔を見て、不思議そうに黙る。 「って――――……先輩が気になってるのそっちじゃないですか?」 「うん。そっちじゃない、と思う……」 「……じゃあ何です?」 「――――……三上の甘々モードって、オレにだけなのか??」  聞きたい事はそれだったので、ずばり、そんな風に聞いてしまった。

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