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第157話◇side*陽斗 4

「えーと……」  三上は、そんな風に声を出して。  それから、ぷ、と笑った。 「甘々モードって……オレそんなですか?」 「うん。……言ってるだろ、たらし、って」 「言ってましたけど……」  三上はクスクス可笑しそう。 「――――……オレね、先輩。付き合ったことが無い訳じゃないんですけど… …特に高校はすごいモテたんで、付き合わなくても問題なかったというか……まあ、今考えれば良くなかったとは思うんですけど……」 「――――……」 「あと、大学は、一応彼女も居ましたよ。別に、恋愛不適合みたいな感じに思われると嫌なんですけど……」 「思ってないよ。ていうか、タラシだと思ってるってば」 「つか、それも嫌っていうか」  三上は困ったような顔で、前髪を掻き上げてる。  形の良い額と、ちょっと困って寄せられた眉。  ――――……ほんと。カッコいいというか、色気あるというか。  オレにこういう色気は無いよなぁ。  オレをカッコいいという女の子も居るけど、多分、三上に感じる男っぽいカッコよさとは全然違う気がする。  それでその色気に。  ――――……何でオレが当てられてしまうのか。  思わずため息をついてしまった。 「ね、先輩」 「ん?」 「オレ」 「うん?」 「……オレ、こんなに好きになるの、初めてなんですよ」 「――――……」  こいつって。  ――――……ほんと、恥ずかしいこと、平気で言うよな……。  もう、一体、何て答えたらいいのか、全然分からないレベル……。 「……ほんとにですからね」  答えないのをどうとったのか、三上がなんか苦笑いで、念を押すように言った。 「――――……」  そんな事を言われてしまうと。  ――――……なんか……。 「三上……」 「はい」 「――――……なんか。オレだけにっていうのが」 「……'甘々'がですか?」  三上がクスクス笑いながらオレを見つめてくる。 「――――……皆にそうなんだと思ってたから」 「……でも、だからって別にオレそこまで冷たくしてた訳じゃないですけどね……ただ、去る者追わずではありましたけど」 「分かってるよ」 「あ、分かってます?」  三上がオレを見て、柔らかく笑う。 「――――……オレ、皆に甘々なんだと思ってたんだけど」 「――――……」 「……なんかオレにだけとか聞くと――――……」 「――――……」 「――――……」 「――――……? 聞くと?」  続かないオレに、三上がそう聞いてくる。 「…………嬉しい――――……のかも?」  そうとしか思えないので、ちょっとためらいながらもそう言ったら。  三上は、オレをマジマジ見つめて。ため息をついた。 「――――……キスしていいです?」 「……無理」  つか、何言ってんだ、こんなとこで。  オレお前の友達にキスしてるとこ見せる気ないぞ。  即お断りしたら、三上は、ふ、と笑って。 「……陽斗さんて、オレの事、結構好きですよね」  クスクス笑いながら。――――……つか、陽斗さんて、呼んだ。 「――――……会社以外は陽斗さんて呼ぼうかなーと」 「……何で」 「んー…… 先輩、て呼ぶより、その気になるでしょ?」  瞳を細めて、オレを見つめる。      …………ほんと、タラシ。  そして何で、タラされる、オレ。

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