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第158話◇side*陽斗 5
次は何を言うのかなーみたいな顔で、楽しそうにされていると、何だか、とっても、面白くない感じがするのだけれど。
やっぱり聞きたいので、そんなのは気にしないで、聞く事にする。
「……三上はさ?」
「はい」
「ずっと、女の子が好きだったんじゃないの? 男、嫌だろ?」
「んー。この話何回かしてる気がしますけど……それ言ったら、陽斗さんも、そうですよね?」
……陽斗さんとか。もう、また、自然と呼んでるし。
く。このタラシ男……。
オレは、蒼生とか呼ぶの、あの、訳わかんなくなってる時にしか無理なのに。素面でなんか、一生呼べる気がしないのに。
……何でお前はそんな簡単に、陽斗さん陽斗さん、呼べる訳……。
オレの心の声など全く気付かず、三上は、オレを見つめて、優しい感じで瞳を緩めて、肩を竦めた。
「別に女が良いって思ってそうしてた訳じゃないですけど……」
「……でも、結局女の子だったろ?」
「陽斗さんもですよね?」
「……そうだけど……」
……あれ。何が言いたかったんだっけ。
えーと……??
オレも三上も、相手が女の子だったっていう話……?
いや、ちがう、聞きたかったのは、そんな事じゃなくて。
「――――……」
何だっけ。
……なんか、三上とこういう話をしてると、正直馬鹿になったかなと思う程、なんだか頭が働かなくなる自覚がある。なんでだろ。
うーん、と肘をついて、額に手を置いていたら。
「あのさ、陽斗さん」
三上に横からのぞき込まれた。
「……うん?」
「ちょっと、ちゃんとこっち向いて」
「……うん」
肘を降ろして、三上を見つめたら。三上は、ふ、と笑んだ。
なんかほんと。
――――……卑怯、な笑顔だよな。
ちよっと可愛いし。でもなんか、カッコいいし。
……優しそう、だし。
……ってほんと、何を考えてるんだろう、オレ。
「この話、多分、この先もずっと陽斗さんは気にしそうな気がするので」
「……?」
「今思った事はっきり言うので、めちゃくちゃ、ちゃんと頭に……ていうか。心の方に、叩き込んでくださいね?」
――――……心に?
……なんかあんまりに真剣にこっちを見つめてくるけど。
誰もこっち見てないのかなと、気になって周囲を見てしまう。
こっちを向いて座ってる客は今の所誰も居なくて、フロアーに1人店員と、あとは中原君が、何かを作って下を向いてるだけ。
ちょっとホッとして、三上に視線を戻した。
「ちゃんとオレ見てて?」
「……うん」
何を言われるのかと、三上を見上げていたら。
「別に女が良かったって事じゃなくて、今まで会ってた男には、全くその気にならなかったってだけの話なんだと思います」
「――――……」
「今こうしてて、オレは、陽斗さんの事が好きだって思うので」
「――――……」
「陽斗さんにはその気になった、て事なので。それで良くないですか?」
「――――……」
あまりにまっすぐなので。
オレは、答えに困りすぎて。ただ、三上を見つめてしまう。
「……これが、この先もずっと続くなら、結果、関係はゲイって事になるかもしんないですけど。それはそれで、オレ、全然良いです」
「――――……」
「陽斗さんと居れるなら、そこらへん、何も関係ないですよ」
「――――……」
…… ダメじゃないかな、これ。
三上の言葉って、聞いてると――――……オレ。
つか。
ダメだろ、オレ。
ここじゃ――――……。
ていうか……オレがダメって言ってんのに……。
「陽斗さん――――……?」
不思議そうな顔をしてる、三上に。
我慢できなくて。
――――……キス、してしまった。
……つか、何してんだ。オレ。
すぐに、ぱ、と離れた。
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