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第161話◇甘すぎるって。

「三上、これ美味しい」 「ん。そうですね」  とりあえず頼んだ食事が来て、食べ終わるまでは出る訳にもいかないし。  先輩は、隣で普通に食べてるし。  さっきまで困ってて赤くなってたけど、少し収まったらしい。  早く家に連れて帰りたいなーとも思うんだけど。  美味しそうで嬉しそうなのはまた可愛いから、まあ、これはこれでと思っていると。 「そうだ、三上、言い忘れてた」 「はい?」 「新人研修、三上がうちの課の指導者になると思う」 「あ、そうなんですか?」 「覚えてる?」 「あれですよね、新人が色んな部や課に巡って、習うってやつ」 「そう、それ」 「……何日位でしたっけ」 「3日間位かなあ。日に2時間ずつくらい。だから、去年の人から指導の資料引き継いで、必要なら手直ししといてもらわないと」 「去年うちの課、桜葉さんでしたっけ。明日聞いてみますね」 「うん」  そっか。と頷きながら。 「歓迎会も担当だし、今年の新人はすごく絡みそうですね、オレ」 「そうだね」 「去年の新人とか、ほとんど絡んでないんですけど」 「でも来年は、マンツーマンの指導もやるだろうし。段々世話してく方になるんだよね」 「そうですね……なんとなくオレは、ずっと陽斗さんの下に居たいですけど」  クスクス笑いながらそう言うと、先輩は、ふ、と笑った。 「そんな訳にはいかないでしょ。お前、その内志樹の方に移るんじゃないの?」 「……そういう意味じゃなくて。ずっと一緒に居たいってだけの話ですよ」 「――――……」  眉を顰めた先輩に、まじまじと見つめられて、思わず、ぷ、と笑ってしまうと、すごくじっと見つめられる。 「あのさー……三上さ」 「はい?」 「仕事の話してる時に、そういうの挟んでくるの、やめて」 「はあ……」 「一瞬何言われてんのか全然分かんないし」 「…………」 「分かった時、すごく恥ずかしいし。だから、ほんとにやめてほしいんだけど」    すごく恥ずかしい、かー……。  ――――……それ、言う方が、オレは恥ずかしいと思うんだけど。  ……何でこんなに、可愛いのかなー。 「とりあえず、分かりました。――――……そういう話はなるべくまとめて、しますね」 「え……なんか、それもちょっとやなんだけど」 「それじゃ話せないじゃないですか」   笑いながら言うと。 「三上、そういうの言いすぎなんだよ」  眉をひそめて、先輩がブツブツ言ってる。  おかしくなって、クスクス笑ってしまいながら。 「――――……もう食べ終わりましたよね? 行きましょ?」 「――――……」 「たくさん、まとめて、話しましょうね」 「――――……」  先輩は、少しの間黙って。  それから。 「やっぱり行かない方がいいかな……」  と、ため息をついている。 「ダメですよ。行きましょうね、陽斗さん」  軽く腕を掴んで、立たせる。 「……うん」  割と素直に頷いて立ち上がった先輩。   なんか、このまま抱き締めたいとか。  思ってしまう。  無理にはしないって言ったけど。  大丈夫かな。オレ。  先輩って――――……なんだかんだオレに甘すぎて。  調子に乗りそうで。……少し、気を引き締める。  ――――……あんまり甘すぎんのって、良くないですよ、と。  上着を着てる先輩を見ながら、思ってしまった。

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