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第165話◇どんだけ

「イメージ通りかも」  オレの部屋に入った先輩は、クスクス笑いながら、そう言った。 「そうですか?」 「うん」 「良いイメージ?」 「うん。良いイメージだよ」 「なら良かったですけど」  言いながら、さっき、貸すからと約束した部屋着を取ってきて、先輩に渡す。 「これ、どうぞ。先にシャワー浴びちゃってくださいね」 「うん」  先輩が荷物を開けて、シャワーの準備をするのを待ってから、バスルームに案内した。バスタオルを棚から取って、はい、と渡す。 「オレ、布団とか用意しとくんで、ごゆっくり。あ、バスタブつかります?」 「ううん、シャワーでいいよ。ありがと」 「はい。じゃあいってらっしゃい」  先輩をバスルームに残して、ドアを閉める。    寝室に向かいながら。  ――――……なんか。先輩がオレんちに居るとか。  ……さりげない顔して、平静を努めてやりとりをしているけれど。  なんだか、本当にすごいコトな気がする。  先週の金曜の出張まで、2人でプライベートを一緒に過ごすとか、考えた事も無かったし。 「――――……」  布団をクローゼットの奥から出して、オレのベッドの横に置いて、更にシーツと布団と枕も出して、重ねていく。   後で、ここで、先輩と寝るのか。  ――――……つか、結構……アレだよな。  忍耐力を鍛える試練、みたいな気もするけど。  ……仕方無いか。先輩が困る事はしないって、オレ言ったしな。  まあそういう事無しでも。一緒に居られるって思うだけで、こんなに嬉しいというか、気分がすげえ上向くと言うか。  冷たく対応されてた時から、今となっては、嫌いになれない自分に余計、ムカついてた気がするけど。  ――――……普通に笑ってくれて話してくれるようになったら、途端にこんなに好きってなるって。なんかもう。  もとからどんだけ好きだったんだろうって話……。  話すようになってすぐ、2泊3日とか一緒に過ごしたからこうなったんだろうか。もし、あそこの2泊が無かったら、こんな風にはなってねーのかな。 「――――……」  布団を整えながら、ふとそんな事を思って少し考えたけど。  よく考えたら、入社してからすぐ今みたいに話してくれてたら、2年前からとっくに迫ってた気がするし。  こないだの金曜にもし泊りが無かったとしても、話せるようになっていたら、飲みに誘ったりして、仲良くなって。……そしたら、やっぱり迫ってただろうし。  てことは、多分、どーやって時間を過ごしたとしても、きっとどこかで、今の状態になってた気がする。  出会い方とか、過ごし方とか。ただのノリとかタイミングが合ったとかそういう事じゃなくて。  きっとどこかでいつか、先輩の事、こういう意味で好きになって、今みたいに、求めただろうなあとか。  改めて、そんな風に考えてみたら。  ちょっと笑えてきてしまった。  …………どんだけ、陽斗さんの事、好きなんだ、オレ。    

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