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第166話◇寝室で。
寝る準備を全部終えて、先輩と寝室に入る。
「三上、明日何時に起きる?」
「7時位? ゆっくり朝食べたいし」
「ん。7時な」
先輩がスマホのタイマーをセットしてる。
「布団ありがと、三上」
「いえ」
「――――……変なの、オレ、ここに居るの」
言いながら先輩、布団に入ると、俯せで枕に顎を乗せた。
オレはベッドに胡坐をかいて座って、足にだけ布団をかけて、少し前かがみで肘に顎をのせた。
「オレはめっちゃ嬉しいですけど」
「――――……またそういうの……」
「だってほんとに嬉しいですし」
言うと、先輩は黙って、ちら、と見上げてくる。
「……三上」
「はい」
「……さっき、ごめん」
「え?」
「……キスして、ごめん」
そう言って、枕に埋まってしまった。
ぷ、と笑ってしまう。
「謝る事なんてないんですけど」
「――――……でも……オレがダメって言ってるのに」
「ダメって言ってる陽斗さんが、キスしてくれたのが嬉しいんですけどね」
「――――……」
枕に埋もれたまま、顔だけちらっとこっちを見てくる。
何か――――……髪、少し乱れてて。枕に埋まってると。ものすごく、幼く見える。
「ダメって言ってるのに、したくなっちゃったんですよね? しかも、あんなところで。それって、オレ的には謝られる事じゃなくて、スゴク嬉しいんですけど」
「――――……」
オレが言い終わった所で、何か言おうとしていた先輩は。
また黙って、はー、とため息を付きながら、枕に顔を埋めた。
少しして、先輩は、さっき置いたスマホを手に取って、何か操作して。
また枕に埋まったと思ったら、すぐにまたスマホを見て、固まった。
「陽斗さん?」
「――――……ちょっと、三上、黙っててくれる?」
「……?」
「オレが電話切るまで、黙ってて?」
「……はい」
よく分からないけど、頷くと。
先輩は起き上がって、電話で話し始めた。
「あ、もしもし――――……あ、うん」
――――……誰と電話?
「なんか、気づいてる事、ある?」
それだけ聞いて。しばらく、先輩は相手の話を聞いてて。
「……大体、あってる、かなあ…… 詳しい事は明日話すけど…… 反対?」
何だかはっきりしない電話だけど。
またしばらく無言で先輩が聞いてる。その内、先輩が、ふ、と笑い始めた。
「……ん、分かった。ありがと、志樹」
言って、切れた電話。
最後の一言に、え?と驚く。
「今兄貴と話してたんですか?」
「うん、そう」
スマホをまた置くと、先輩は苦笑い。
「――――……気づいてる事ある?て聞いたら。三上に迫られてるか、そういう関係になったか、どっちかか、どっちもかって、言われた」
「――――……」
怖――――……。
何なのあの人。やっぱり超能力あるんじゃねーのか……。
「反対かって聞いたら、それはオレが決める事じゃないって。どっちでもいい、だって。――――……志樹らしいね……」
ほんと。くそ兄貴らしい。
どっちでもいい、言いそう……。
「とりあえず、志樹がめちゃくちゃ反対じゃないのは分かった。……あとは」
「……?」
「……ほんとにいいのかなあってところ、なんだけど……」
「陽斗さん……?」
「――――…………」
先輩がじっとオレを見て、何だかすごく色々考えてるっぽい顔をしているので。
オレはしばらく無言で見つめ返していると。
先輩は、ふ、と息を吐いた。
なんかすごく。――――……緊張してるっぽい。
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