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第171話◇めいっぱい
「……陽斗さん」
「うん……」
「……嬉しいんですけど――――……あんまり可愛いと……」
「可愛くないし」
「あんまり可愛すぎると」
「可愛すぎないし」
「――――……」
「――――……」
2人で、見つめ合って、苦笑い。
「とにかく、ほんと、可愛すぎると……襲いますよ」
「――――……」
先輩は、じっとオレを見て。
しばらく無言で、じーーーっとオレを見続けて。
「オレ、穴あきますけど」
思わず苦笑を浮かべてしまうと。
不意に先輩の手がオレの頬にかかった。
「え」
「……それがさぁ、三上」
「は、い」
「……オレ、別に、やじゃないんだよね」
「――――……」
「困った事に、全然、嫌じゃなくて」
「……こま、るんですか……?」
頬に触れてた手をそっと離して、先輩は、その手を握った。
「だってさ、お前とこのままいいのかなとか、色々思ってるのに――――……何か……こないだも、全然嫌じゃなかったし」
「――――……」
「……困るよな?」
「――――……オレ、困らないですけどね」
「あ、困らないのか?」
「はい」
そこで目が合って、2人でまたクスクス笑って。
――――……先輩が、少し近づいてきて。
「――――……」
頬にキスされる。
「……おやすみ、三上」
「――――……ん。おやすみなさい、陽斗さん」
「あー……」
「……ん?」
「おやすみ――――…………あおい」
「!」
言った瞬間オレが見つめてしまったからか、先輩は暗い中でも分かる位に赤くなって。
「や、……っっぱり、無理。 おやすみ、三上!」
むぎゅ、と抱き付いてくる。
「つか、言い直さなくていいのに――――……先輩?」
腕の中に潜り込んでる先輩に、もう、苦笑するしかない。
名前呼ぶより、抱き付く方が恥ずかしくないのかな?
もーほんと。抱いてしまいたいけど。
手順。手順……。
ていうか、ほんと、嫌じゃないとか、散々煽られてるけど。
……手順…………。
自分に言い聞かせてから。
「――――……おやすみなさい、陽斗さん」
笑ってしまいながら、先輩を抱き締めて、髪を撫でる。
そのまま、さらさら、触れていると。
「――――……」
しばらくして、すー、と寝息が聞こえ始めた。
少しだけ腕の力を弱めて、寝やすいようにしてあげてから、その顔を見つめる。
ほんと――――……綺麗な顔。
仕事は、ほんと尊敬できる先輩。
この人が、オレの指導者で、本当に良かった。
――――……態度は、最悪だと思いながらも。嫌いになれなくて。
他の奴と笑ってる姿にムカついてたのも……今なら嫉妬してたって分かる。
話してみたら、恋愛事になると、なんか抜けてて。
……反応全部、可愛くて。
なんかほんと。……こんな風に、腕の中に居てくれるとか。
嘘みたいだよな。
じっと、見つめてしまう。
睫毛、長いなあ……。 可愛い。
何なんだろう。全部が綺麗だし。全部が可愛く見えるって。
まあ何なんだろうも何も、大好きだって事以外に、理由なんかねーよな……。
一ヶ月恋人。
とりあえず、めいっぱい、恋人、しよう。
――――……一ヶ月で終わらす気なんか、これっぼっちもねーけど。
(2022/2/25)
「愛じゃねえの」
ノベルアップ+様の「BLコミック原作小説コンテスト」二次選考に通ってました😭 応募401作品→最終選考9作品残ってる内の1つに…😭
いつも読んで下さる皆さま、反応下さるから楽しく書けてます。ありがとうございます☺️💕 最終結果まで静かに待ちます♡
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