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第185話◇side*陽斗 4

 数分後。  チャイムが鳴って、通話を押すと、三上が映った。 「先輩、openボタン押して下さい」  言われて、エントランスの自動ドアを開けるボタンを押す。  それから、玄関に行って、鍵を開けた。  なんとなく、外に出て迎えるとかは、ちょっと変かなと思って、すこしだけ顔を出してみた。  エレベーターが止まる音が遠くで小さく聞こえて。  そっちの方を見ていると。すごく、早足で歩いてくる三上が見えた。 「――――……」  途中で、ドアを少し開けて覗いてるオレに気付いて、笑顔になる。 「ただいま、陽斗さん」 「うん。おかえり」  ドアが大きく開いて、三上が中に入ってくる。  三上は、玄関の端に鞄を置いて、「シャワー浴びてくるね」と、ろくに話もしないで、バスルームに消えてしまった。 「――――……」  あれ。  もっと、すっごく喜ぶのかと思ってた  まあ、笑顔には、なってたけど。   ……なんか、ちょっと拍子抜け?  リビングに戻って、つけていたテレビを、なんとなくぼー、と眺めながら。  とりあえず三上が出てくるのを待っていたら。  がちゃ、とバスルームが開く音がした。  と思ったらリビングにすぐ現れて。  髪の毛の雫をタオルで拭きながら、オレに近付いてきて。  何となく、ソファから立ち上がった瞬間。腕を取られて引き寄せられて。  ぎゅー、と抱き締められた。 「……三上?」 「――――……ただいま、陽斗さん」  なんか、めちゃくちゃ暖かくて、ホコホコしている。  むぎゅむぎゅと、抱き締められて。ちょっと戸惑う。 「――――……?」  少し離されて、見下ろされる。 「なんで、手、回してくんないの? 嫌?」  オレが抱き付けなくて戸惑ってた手にツッコミが入る。 「あ。いや――――……だって」 「だって、何?」 「……なんか。さっき。すぐシャワー行ったし」 「――――……」  三上が、何回か瞬きして。  それから、ふわ、と嬉しそうに笑った。 「ごめんね、なんか、禁煙席空いてなくて、喫煙席の方に座ったらすっげー煙いし、なんか、そんなんで陽斗さん、抱き締めたくなくて」 「――――……」 「だからもう、速攻シャワー浴びたんだけど」 「――――……っ」 「何? ……寂しくなっちゃいました?」 「――――……っっ!」  ……っっじゃあ、そう言えよ!  っなんか、あんまり嬉しくなかったのかなと思って、ちょっと、来なきゃよかったかなとか、少し思っちゃったじゃないか! 「――――……あー。もー」 「――――……」 「可愛くて、無理」  三上の手が顎に触れて。まっすぐ見上げらせられて。 「――――……っん……」  深く、重なってきた。  ぎゅ、と抱き締められて。三上の手が、背中を支える。 「――――……ン、……っ」  舌が、唇の間から少しだけ入ってきて、オレの舌先にそっと触れる。  触れるだけ。  絡んでこない。 「――――……?」  瞳を開けると、三上がオレを見てる視線と絡んで。  ふ、と優しく笑まれる。  キスしたまま、そんな風に見つめられると。  かあっと、顔に血が集まってくる。 「……キスしていいなら、舌、ちょうだい」  少しだけ離されて、囁かれて。また、舌先が、触れてくる。  ぞく、とした感覚が体の奥で沸いて、ぴく、と手が、震えた。  その手で、三上の服、握り締めて。 「――――……」  舌を、三上の舌に、そっと触れさせたら。  ふ、と三上が、笑うような吐息。  すぐに、深く、絡められて。  ぎゅ、と瞳を閉じた。

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