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第187話◇side*陽斗 5
「――――……ン、ふ……」
三上のキスは。
もう、分かってるけど。
ヤバいし――――……。
少し、気を抜くと。
変な声、出そうになる。
「――――……はるとさん……」
少し離されて。
名前を囁かれるのも。……ほんと、ヤバい。
体の……気持ちの、かな??
……とにかく、オレの真ん中に、ぎゅ、と熱が集まる。
「……っン……は――――……」
最大に気持ち良い感じで、舌が絡んで。
口内、舌で擦られて――――……舌、奪われて、吸われる。
「……んっ」
舌が引きつる。小さな痛みに、ゾクゾク、する。
オレ。 ――――……なんかもう。
三上の事、好きすぎて。
「……ふ……」
頭の中、他に何も考えられなくて。
ゆっくり舌が外れていくのを感じて、ふ、と瞳を開く。
涙がたまってるみたいで。ぼやけていて、ぎゅ、とつむると、零れた。
ふ、と笑んだ気配がして。
「陽斗さん……」
「――――……?」
「……また泣いてる」
笑んだ三上がその指で涙をぬぐう。
「あー、かわいー……なんで、そんなに可愛いのかな」
ぎゅー、と抱き締められる。
「なんかさ」
「……?」
「仕事してる時は、陽斗さんて、別に可愛い訳じゃないんですよ」
「――――……」
仕事中、オレが可愛かったら困るけど。
……ていうか、お前の「可愛い」がオレはまだ全然意味が分からないんだけどね……。
「むしろカッコいいしね……」
笑みを含んだ声で、そう言われて。
なんか、ちょっと、それは嬉しい。
「――――……陽斗さん、髪冷たいね」
「あ。まだ乾かしてなかった」
「乾かそう。そこ座ってて」
ソファに座って待ってると、すぐに三上がドライヤーを持ってきて、オレの髪に当て始めた。
「――――……」
気持ちいいな。
少し俯いて、何となく目をつむってしまう。
男にキスされて、抱き締められて。
……ドライヤーされて。気持ちいいとか。 …………なに、これ。
違和感というか、そういうのが全然ない自分の事が、不思議になってしまう。
もとから、男でも良かったのかなあ……。
実は、こういう風に、「される」のが好きだった? オレ……。
考えた事も無かったけど。そうだったんだろうか。
「はい、OKですよ」
「ありがと」
見上げると、三上がニコニコ笑う。
「じゃあ次三上、座って」
「え、良いんですか?」
「何いいんですかって。良いよ」
嬉しそうな笑顔に、笑ってしまう。
位置を替えて、今度はオレが三上の髪を乾かす。
――――……あーなんかもう。
三上は何でかオレを可愛いって言うけど。
絶対、三上のが、可愛いんだよね。
どうしてなんだろう。黙ってたら、すごくカッコいい奴なのに。
なんなの、嬉しそうな顔とか。
優しく笑うとか。
女の子の、可愛らしいとかとは、全然違うんだけど。
――――……胸がきゅんとするって、聞いた事はあったけど。
……こないだ京都行って、三上かに感じるまで。オレ、今まであんまり感じた記憶がなくて、きゅんて何だろうって思ってたのに。
……まさか、後輩の男に、そんなもの、実感する日がくるとか。
「――――……」
段々フワフワ乾いていく髪の毛を触りながら。
そういえば、見下ろすってあんまり無いなーと気付く。
――――……三上の髪の毛に触るってことも。
三上はオレをよく撫でるけど、三上の方が背が高いし、オレがちゃんと髪に触る事って、すごく珍しいかも。
ちょっと楽しくなって、ほわほわと乾かしながら、三上の髪に触りまくっていると。三上がオレをふ、と見上げて、クスクス笑い出した。
「……何?」
「いやなんか――――……楽しそうですね」
「……うん。なんか、楽しい」
答えると、また楽しそうに笑う。
――――……なんか。三上と居ると、ずーっと、楽しい気がする。
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