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第213話◇side*陽斗 3

 どうしてお試し、なんて事になったか、一通り志樹に話し終えた。    オレが本当に良いのか、迷いすぎて、決められなくて。  その気持ちをきっと分かってくれて、三上が提案してくれたって事。 「――――……意味わかった?」 「……まあ、とにかく、お前が、将来まで覚悟が出来てないって事だろ?」 「――――……」  あまりにズバリで、仕方なく、少し頷く。 「……お前の将来がってよりは――――……蒼生の将来か?」 「――――……」 「蒼生の事が信じられない?」  志樹に聞かれて、んー……と止まる。 「三上は、すごいまっすぐで……今は、それでほんとにいいって思ってくれてるのも、分かってるんだけど」 「未来までは、信じられないとか?」 「……違う、信じてないんじゃなくて。本当にそのままずーっと付き合っていったら……本当に良いのかなって、話かも」  信じてないんじゃない。  ……三上と居ると、すごく居心地よくて。  カッコイイし。……可愛いし。  ……何なら、今までいた誰よりも、ドキドキするし。  ――――……三上が向けてくれる好きっていうのも、結構信じてて。   ……オレ達って、合ってるなあって、思う。思うからこそ。 「……別れないでいっちゃった時に……本当によかったのかなあって、思いそう……? ……って、意味わかんないか」  自分で言いながら、途中でよく分からなくなって、苦笑いで誤魔化したら。  志樹が、ふ、と笑った。 「別れないで行けそうって思う位、そんだけ好きだと思うなら、そのまま行けばいいのにな」 「――――……」 「蒼生の事なんか気にしないで大丈夫だと思うけど」 「……そういう訳にも……」  んー、と言葉に詰まっていると。志樹がちょっと息を吐いた。 「蒼生が選択して、お前と一緒に居るのに、何でいいのかなあなんて思うんだよ?」 「――――……」 「……ってまあ、何か分かるけど」 「……え。分かるの?」  志樹は面白そうに笑って、オレを見つめる。 「指導者で先輩だからだろ。年上ってのもあるか? 後輩の年下、正しく導かないととか、思ってるんだろ」 「――――……」  …………思ってる。うん。そうだな。オレ。それ、すごく思う。タメの同期だったら、考えなかったかも……。  答えないで、心の中でそう思ってると。  志樹が、まあ絶対そうだろうけど、と笑う。 「でも蒼生、世間知らずの馬鹿ではないと思うぞ。なんだかんだ色んな事やって生きてきてるし。人付き合いも多い奴だから、色んな奴知ってて、その中で譲らない自分ってもん、持ってる、と思う」 「――――……ん」 「つか、これ、言うなよ。マジで褒めると、調子に乗るから」  その言葉。三上の指導を任された時もさんざん聞いたなあ、と思い出して。  ふ、と笑ってしまう。 「どんだけ、褒めたらだめって思ってるの?」 「ほんと調子乗るから。子供ん時から、ずっとそう。調子に乗ると失敗するし」  何を思い出してるのか、苦笑いの志樹。   「……まあとにかく。そうは言ってるが、あいつはちゃんと大人な訳。そいつが自分で決めて、選ぶんだから……陽斗が気にする事、何もないだろ」 「――――……」 「と、思うけどな。……というか、オレから見て、ひっぱりこまれてるのは、むしろお前だけどな」  クッと笑いながら、志樹がそんな事を言う。 「お前が無理無理誘って、騙してるとかでもないのに、何でそんな無駄な事考えんのかと思うけどな――――……まあ、陽斗らしいか」 「……無駄な事なのかな」 「無駄」  ――――……なんだかなあ。もう。  苦笑いしか浮かばない。 「オレがすごい考えてる事、無駄の一言で終わらせないでくれない?」 「まあ別に。オレはお前たちが付き合おうが、やめようが、好きにすればいいと思ってるから――――……蒼生を薦めるつもりもないけどな?」 「薦めないの?」 「薦めない」  そんな志樹の言葉に、笑ってしまう。

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