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第214話◇side*陽斗 4

 お酒を飲みつつ、つまみつつ。  三上の事以外の仕事とか、色んな話もしていたら、ふと、志樹がオレを見つめた。 「……なあ、陽斗?」 「うん?」 「蒼生さ」 「うん」 「あいつがお前を好きなのは、会った頃からじゃねえの? 言ってなかった?」  そんな風に聞かれて、んー?と考える。けど。すぐに違うんじゃないかと思った。 「そんな事ないと思うけど。だって、オレ、志樹のせいで嫌われてただろうし」  べ、と舌を見せると、志樹は、苦笑い。 「嫌ってないだろ。あれは」 「ん?」 「蒼生は、ばらす前も嫌ってないと思うけどな」 「何でそう思うの? 普通にきつかったと思うし。好かれては無かったと思うけど。なんか三上は、嫌えなかったとか、気を遣って言ってくれてた気はするけど」 「――――……」  オレの言葉を聞いて、志樹は、ふ、と笑った。 「それ気を遣ってんじゃないって。絶対」 「そう?」  何でそう思うんだろ。  と、不思議に思いながら、志樹を見ていると。  クスクス笑いながら、話し始める。 「オレ、お前に色々頼みはしたけど、一応様子は見てたんだよ。蒼生が入社してから。もし、陽斗に対してあまりに反発し始めたら、仕事も覚えないだろうし、さすがにそれはまずいかと思ってさ」 「……そうなんだ」 「もしそうなったらすぐばらして、仲良くさせてにするかとか。最初は色々考えてたんだよな」 「そうなの? だって、オレが何回も、もういいんじゃないって言っても、まだって、言ってたじゃん」  オレは結構嫌だったけど、と思い出して少しムッとしながら言うと。 「だからさ。反発もしないで、お前の振る仕事、めちゃくちゃ頑張ってやってただろ。 しばらく見てたら、ああ、蒼生は「出来ない奴」って、陽斗に思われたくないんだろうなと思ってさ」 「――――……」 「文句も言わず、ちゃんと仕事こなしたろ? お前に反発した事、あった?」 「――――……無いけど。三上はほんと、頑張ってたし」 「これはベストだなと思って。ほっとくことにした」 「――――……」  うわー。と、ちょっと引く。  何となく、志樹がどういう奴かは分かってる。  別に嫌な奴じゃない。優しく、思える時もあるし。気を使える奴でもあるし。でもなんか。  こう、人を手の中でコロコロ動かす。無意識なのか、意識なのかといったら、意識的にも出来る奴。カリスマ性があるっていうのはこういう事なのかなーとも思う。まあ。次期社長。うってつけなんだろうなと。思ってる。  ――――……でも。たまにちょっと。怖いというか。 「引くなって」  クックッと笑われる。 「……引くよ」  だってなんか、全部お見通しで。色んな事見ててさ。 「でも結果、蒼生はよく育ったし。陽斗も嫌われてないし。良かったろ?」 「それは結果論、だと思ってたけど――――……」  お前は、分かってやってたのか、と思うと。  やっぱ、ちょっと引く。 「あの頑張ってたのが、陽斗を好きだからだって思うと、まあ、ものすごく納得もいくけどな、オレは」 「――――……そういう意味で好きだったかは、分かんないじゃん」 「もちろん、認めては無かったと思うぞ。自分に冷たい奴を恋愛で好きとか、認めないだろうし。――――……でも、嫌われてなかったと思ったから、もう、抑えられなくなったってとこじゃないの? そういうの、聞いてはない?」 「……ないと思う……」 「……つかさ。そうじゃない限り、ネタ晴らししたほんの2日で、蒼生が男とそうなるなんて、ありえないだろ」  もはや言い切って、グラスを煽ってる。 「――――……それは……分かんないけど」 「分かるって。分かれよ」  志樹は面白そうに、クスクス笑ってオレを見つめる。 「何でそんな、陽斗、自信無い?」 「――――……無いだろ。だって……」 「だって何? 男だから?」 「――――……心読むのほんとやめて」 「読むまでもないけど、それ」  は、と笑われて。もう、無表情で居てやろうか、と思ってしまう。   

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