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第215話◇side*陽斗 5
何か志樹はほんと心を読んでくるし。
志樹に、志樹の弟との恋愛話をしなきゃいけないとか。
ほんと、恥ずかしいというか、なんかすごく、気も使うというか。
あれこれ答えながらも、自然と酒を飲みながらになってしまって。
だんだん、ぽわんぽわんしてきた事に、ふと、気づいた。
「……志樹、オレ今、顔赤い?」
「赤い」
「……そっか」
はー、と息を吐くと。息まで熱い、気がする。
オレ、結構今、酔ってるかも。
「つかさ。何でさ、お前ら兄弟は、酔わないの?」
「――――……」
志樹が苦笑いでオレを見てる。
「蒼生も強いよな……」
「強い。全然赤くなんないんだよね、三上……」
「親父も強いしな」
「そーなんだな……三上家な……家族ではあんまり飲まないの?」
「ああ。そこまでたくさん飲む事はないから。酔ってるのは見た事ないな」
「そうなんだー……そっか……うん、なんか、すごく強い……」
言いながら、ふわ、と欠伸が漏れてしまう。
「……ていうか、今だってさー、志樹のが飲んでるのにね」
「眠くなってきた?」
「うん。……今何時?」
「22時半」
「そっか……」
三上、もう、帰ったかなあ。
まだ、かなぁ――――……。
「なあ、志樹はさ」
「ん」
「――――……弟が、男と付き合うの、良いのか?」
「――――……」
志樹の表情の変化、見逃さないように見つめながら聞いたら。志樹は、特に表情を変えずに、オレを見つめ返して。
それから、ふ、と笑んだ。
「だから、蒼生はもう大人だから。蒼生の自由」
「――――……家族が、そういうの……嫌じゃない?」
「あいつが女と付き合おうと、お前とだろうと、関係ないだろ」
じっと見つめていたけど。志樹は、もう、当たり前のことのように、平然と答えるだけ。
「じゃあな、陽斗、逆に聞くけど」
「……?」
「オレがダメだって言ったら、付き合わないのか?」
「――――……」
そう聞かれて、オレは、ただ、志樹を見つめた。
志樹にダメだって言われたら?
――――……志樹に。反対されたら。
「――――……」
まっすぐ見つめ返して数秒。
オレは、思わず、苦笑い。
「――――……ごめん。ダメって言われても……聞けないかも……」
なんか。
三上の笑顔が、咄嗟に浮かんで。
……そう思ってしまった。
オレが答えて、また少しだけ間が空いて。
志樹が、クスクス笑い出した。
「そうだよな」
「――――……」
「逆に、諦めるって言うなら、反対したけどな?」
志樹の顔に、ふ、と笑みが浮かんで、オレを見つめる。
「――――……」
何だか言葉が出なくて、ん、と頷いて、志樹を見つめ返す。
なんだか照れくさくなって、ふ、と笑ってしまった。
「何かあったら、言えよな」
「え。……オレ、志樹に恋愛相談するの?」
そう言うと、志樹は、ニヤと笑みを含めて、肩を竦めた。
「他に言えないだろ?」
「……うん。だね」
二人で、くす、と笑いあう。
「……でも、三上ってさ」
「ん?」
「何かあっても、三上と話せば――――……解決する気が、する。もし、しなかったら。相談するね」
思うまま言うと、志樹はまた面白そうに笑う。
「とりあえず、今日は」
「うん? 今日は?」
「蒼生だけが迫って、そうなったんじゃなさそうだなって、分かった」
「――――……」
ニヤニヤ笑いながら、そんな風に言われて。
――――……オレが三上を大好きって事が、バレた気がして。
思わず、視線を外してしまった。
なんか、すっごい、恥ず……。
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