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第217話◇side*陽斗 7

「蒼生が来るまで15分位はかかるな……」  そう言って、志樹は、飲みかけのグラスに口をつける。 「オレが鍛えてるから、あいつは、弟気質っつーか。頼まれたり、動いたりすんの、基本的に、嫌じゃない奴に育ってるから」  志樹が面白そうに笑う。もうなんか、苦笑いしか浮かばないけど。 「鍛えたって……まあでも、弟ってそうかもね」 「だから、何頼んでも、そんな嫌がったりする奴じゃないから」  クスクス笑いながら、志樹がオレを見る。 「そんな事言っても……」 「とにかく、遠慮しない。以上」 「以上って……」  志樹の言い方が可笑しくて、クスクス笑ってると。 「たまには我儘言えよな。あいつは絶対へーき」 「……ん」  まあ確かに。  三上が、嫌そうにするの見た事ないな。  むしろ自分からあれこれ動いて、色々してくれて、それが楽しいみたいな感じ。……女の子と付き合って、あれしたら、最高の彼氏だろうなー、と思ってしまう。 「あ、そうだ。陽斗」 「ん?」 「……これ、マジメな話な?」 「うん?」 「――――……蒼生は、その内、営業じゃなくて、オレの仕事の方とか、あいつがもっと動ける所に引っ張る予定」 「うん」  それは、三上が入社するって決まって、オレに頼んできた最初の時も言ってたので、すぐに、頷いた。  志樹は、オレをまっすぐ見つめたまま。 「……お前も、引っ張って良い?」 「え?」  オレも引っ張る? オレの顔を見て、志樹は、ふ、と笑んだ。 「オレの所か、 蒼生の所か。まあ、蒼生に何させるかとか、もっと具体的に決まってからになるけど。……お前は、営業にずっと居たいかどうか、考えといて」 「……」  急な話で、志樹をまっすぐ見ながら、考えて。 「すぐじゃなくて、先、だよね?」 「そ。とりあえず今年はまだお前の下に置いとくし」 「……ん。考えとく」 「まあお前、営業向いてるし、部長が嫌がりそうだけど」  そんな志樹の言い方に、笑ってしまう。 「どうだろな……オレ、営業の仕事は好きだけど」 「ああ。そうだろうけど」 「……でも、三上家のサポートするのも、面白そう。役に立つなら」 「役に立つだろ。あーでもなー。蒼生にお前をサポートにつけるとか言ったら、舞い上がって使い物にならねーかな」  冗談めかして言って、苦笑いの志樹に、ふ、と笑ってしまう。 「……そんな事ないよ、きっと」  オレがそう言うと、志樹もオレを見つめて。少しだけ笑う。  きっと志樹も、そんな事はないと思ってるんだろうなと分かるので、オレもそれ以上は何も言わないでいると。 「……まあ。考えといて? 蒼生のサポートは、蒼生とお前の関係にもよるしな」 「うん」 「まだ先だから」 「ん。分かった」  色々考えながら、志樹を見つめて、頷く。  オレと三上の、関係、かぁ……。    どうなってくんだろうと、思うと、色々考える事はあるのだけれど。  なんか、浮かぶのは。  ……三上の、笑顔だなぁ……。  オレどんだけ、三上の笑った顔、好きなんだろう。  

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