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第219話◇side*陽斗 9

 触れてた唇を、ゆっくりと離す。 「陽斗さん……」  なんか、ものすごく嬉しそうな顔で笑って。  オレを、じっと見つめてくる。  まっすぐな、この瞳が、すごく、好きだなと思う。  三上とこうなってから、なんかずっと一緒だった気がして。  ――――……三上と久しぶりに離れて、  三上の事を思い出しながら、三上との事を話すとかしていたら。  ……なんか。  わりと冷静に、三上の事想えて。  分かってたけど、ますます好きを実感した気がする。 「……結構酔ってるでしょ」  オレを優しく見つめて、ふ、と笑う三上の手が、頭から頬に、触れる。  少し首まで滑って、苦笑い。 「熱いよ、陽斗さん」  ちゅ、と頬にキスされて、ただ、三上を見上げる。 「――――……可愛いんだから、オレ居ないとこで、あんまり飲まないでよ」  両手でオレの頬を挟んで冷やしながら、クスクス笑う。 「陽斗さん、あのさ」 「……」 「オレんち、連れて帰っていい?」 「――――……」 「もう遅いし、変なこと、しないから。シャワー、別々に浴びて、寝る準備して。――――……一緒に寝よ?」  最後、ちょっと、優しく笑みながら、聞かれて。  ――――……断れる奴って。居るのかな……??  居る? こんな風に言われて、断れる奴。居ないよね。絶対。 「……朝、オレんち寄って、スーツ着替える」 「ん。一緒に行く」 「……じゃ、行く」  三上はすぐ、嬉しそうに笑って、オレの腕を掴んだ。 「早く帰りましょ」 「ん」  頷いて、立ち上がる。  三上が先を歩いて、一緒に店を出て、エレベーターで一階へ。  夜の街を、一緒に歩き始める。 「兄貴との話、どうでした?」 「……うーん。どう……」  どうって言ったらいいんだろ。うーん。 「なんか、志樹、だなあって感じで……」 「うん」 「どう転がっても、良いみたいな、感じ。分かる?」 「分かる」  三上は、すごく苦笑い。 「……反対もされなかったってことですよね?」 「うん」 「賛成もされなかった?」 「うーん……? 反対してないっていう時点で、認めてくれてるような気もしたけどね。どっちでも、いい、て感じがしたかなあ」  クスクス笑いながら、思い起こしていると。 「兄貴が陽斗さんの事、好きじゃなくて良かった」 「…………えっ??」 「……いや、なんとなく」  オレの顔を見て、三上は、そう言いながら、ぷっと吹き出した。 「そんなに驚く?」 「……だって。志樹がオレを好きじゃなくて良かったって……意味が全然分かんなくて」 「分かんないじゃん。兄貴が陽斗さんに惚れないとも、限らないし」 「……オレ達、そんな雰囲気、一切ないけど」 「――――……あのね、陽斗さんに無くても、相手にある事もあるからね?」 「…………」 「これは、兄貴に限らずだから」  何だか真剣な顔でオレを見つめてくる三上を見てたら、何だか可笑しくなってきて。 「それって、男の事言ってる??」 「男も女も」 「……オレ、男にモテた事ないけど」 「――――……」  三上は、何やら、すっごく眉を寄せて、複雑な顔をしている。  ……ん? ◇ ◇ ◇ ◇ (2022/6/2) あれっ。26日以来。 思ってたよりちょっとお久しぶりの更新でした(*'ω'*) ただいま、の気分。

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