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第234話◇side*陽斗 6

 やっぱり、三上は、イイ男だな。  もう、分かってたけど、改めて思ってしまう。 「仲良くなって帰ってきただろ?」 「……そうですね。ありがとうございます」 「まあ……元々、すごく仲良いって感じじゃなかっただけで、別に嫌いあってる感じはなかったけどな」 「……そう見てたんですか?」 「お前が三上の報告する時は褒めてるし。三上に仕事を聞くと、どう聞いても、渡瀬のことは良いと思ってるっぽいし」 「……そうですか」  つい口元が緩んでしまう。  三上はそういう奴だよな。  ――――……二年もオレ、あんな感じで過ごしてきたのに。ほんと。なんだかなあ、三上って……。 「あいつ、仕事できるよな」 「そうですね」 「まあその内営業からは出てくんだろうけど」 「………………え?」  部長を見ると、ニヤニヤ笑いつつ。 「まあ……そう思ってるだけ。何も言わなくていーぞ」 「――――……」  ……三上と志樹が兄弟って知ってるのかな。知ってるっていうか。そう思ってるってとこか。……志樹がオレに三上を頼んだとは言え、そっか、部長も通さないとだもんな。何処まで話してるか知らないけど……多分はっきりは言われてないけど、通じてるってことかなあ。  志樹と部長が、はっきり話さず、うやむやで通じ合ってるのとか。  ……なんかちょっと怖い。    苦笑いを浮かべながら、開いてる部長のグラスに気付いて、メニューを差し出した。 「何飲みますか?」 「んー……ワインいくか。白と赤どっちがいい?」 「あ、オレ、今日あんまり飲まないんで、グラスで頼みますか?」 「何で飲まないんだ?」 「昨日も飲んでたんで。ちょっと休みます」  ……まさか三上に心配されてるとは言えない。  しかも、酔うと可愛いとか、全く意味の分からない理由で。 「ふーん? 明日はそんなに早くないから、飲んでもいいぞ」 「軽く飲みますよ。部長、ワイン、どれですか?」 「これ」 「はい」  部長の指したものを店員に注文して、メニューを片付ける。  そう言えば、部長と二人で飲むとかは、初めてかも。  昼食位なら、たまにあったけど。  ……なんかやっぱりこの人は――――……すごい人を見てるよなあ。  三上とのこと、バレないように気を付けよ。 「なあ、今度の新人指導、うちの部は、三上なんだよな?」 「そうですね」 「新人に手ぇだすなよって言っとけよ」 「……出しそうですか? 三上」  部長にはそう見えるのかなと思ってそう聞いてみると、部長は首を傾げた。 「どうだろうな? ただ、モテるだろうなーと思ってな」 「まあ……そうですね」 「ほら、新卒の女の子とかさ。先輩のイケメンに夢中になるとか、目に見える感じしないか?」 「……部長、三上の事、イケメンって思ってるんですね」  何だかそのポイントに引っかかって言葉にすると、可笑しくなってクスクス笑ってしまった。 「まあそうなんじゃないか? 言うなよ、調子に乗せるの面白くない」 「はい」  笑いながら頷く。  新卒の女子が、三上に夢中、かー……。  そういえば、オレが指導した時も、すごい懐かれた子、居たっけなあ。  そっかー。そうだよなー。  三上は、オレなんかより、もっとモテそう……。 「言っとけよ、手ぇ出すなって」  えーと。でも。  ……それをオレが言うと。  ……ヤキモチで言ってるって勘違いされないかなあ……。  と、なんだかとても複雑な気持ちになりながら、曖昧に頷いた。

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