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第262話◇浮かれて。

 一緒に食事をして、片付けるからと、陽斗さんには座っててもらうことにした。片付け位一緒にできるのにというけど、今日はオレが世話する日、と言って断った。 「陽斗さん、コーヒー飲みますか?」 「うん」  ソファに座ってる陽斗さんに聞くと、頷く。それだけでなんか幸せ、とか。  ああ、オレ相当浮かれてるかもしれない。  テレビをつけて、ぼーと眺めてる。  天気もいいし、明るい陽の中、穏やかな雰囲気で座ってる陽斗さん。  どう落ち着こうとしても、やっぱり幸せすぎる。  コーヒーを入れて、マグカップを陽斗さんに渡して、隣に座った。 「ありがと」  ふわ、と笑って、コーヒーを飲んだ陽斗さんと、目が合う。 「三上って」 「はい?」 「イイ男だよな」 「――――……」  まっすぐ言われて、とっさに返せない。 「……そう、ですか?」 「うん」  ふ、と笑う。 「陽斗さんに言われると――――困りますね」 「困る? 何で?」 「……絶対陽斗さんのが、イイ男だと思われてると思うので」 「そんなこと無いと思うよ」  コーヒーを一口飲んでから、オレを見つめる。 「見た目だけでもさ、背高いし、強そうだし。筋肉あるの、スーツ着てても分かるし」 「でも別に陽斗さんも小さいとかじゃないし」 「まあそうなんだけど。三上が入ってきた時、後ろにいた女子たちが良い体してるって静かに盛り上がってて、確かに、と思ったんだよね」 「そうなんですね」  まあ、良い体してるとは言われるけど。 「特攻服、似合ってたもんなー。あれ、体格いいと、カッコいいよな」 「その話、好きですね」  また出てきた特攻服に、笑ってしまうと、陽斗さんも、悪戯っぽく笑う。 「だって、あれカッコいい」 「本気ですか?」 「うん。似合ってたよ?」 「族とか、憧れありました?」 「ん、高校生の時?」 「はい」 「憧れは、ないかなあ。オレ、バイオレンスとはかけ離れたとこに居た」  クスクス笑う陽斗さんに、そうですよね、と笑ってしまう。 「良かったですよ、陽斗さんの顔、殴られたりしたら、嫌ですし」 「はは。そう?」 「そうですよ。過去でも、考えただけで嫌ですね」 「そっか」 「何してました? 高校ん時」  ふ、と笑う陽斗さんに、思いついた質問をすると。 「部活頑張ってた。――――……何部だったと思う?」  楽し気に微笑んで、陽斗さんがオレを見つめる。  何だろ? 「文化部じゃないですよね?」 「うん」 「サッカーっぽくないような……」 「何で?」 「脚、綺麗だから」  言ったら陽斗さんは、きょとんとして、脚?と聞いてくる。 「サッカーって筋肉つくからもっとごついかなって」 「なるほど……うん。サッカーじゃないよ」 「んーなんだろなぁ」 「あててみて」  クスクス笑って、オレを見つめてくるのが可愛く見えて、抱き締めたいのだけれど、コーヒーを持っているし、その前にと答えを考える。 「……剣道とか?」 「んー……違う」 「んー、って?」 「……ちょっと惜しいから」 「惜しいの? ……フェンシングとか?」 「フェンシング、高校の部活にあるとこあるの?」 「うちありましたよ?」 「へえ、そうなんだ」 「でも違うんですね。んー……」  ……惜しい、か。  何だろ。柔道ぽくないし。……あ。 「弓道は?」  言った瞬間、陽斗さんがぱっと笑顔になった。 「あたり」 「弓道か……似合う、すごく」 「そう?」  ふ、と笑って、またコーヒーを飲んでるけど。  なんか、袴姿とか。エロい。  ――――……怒られるか。   (2023/9/24) 5か月ぶり(^^; すみません、お久しぶりで。

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