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第一章・7

 ダイニングルームに通され、藍は再び目を円くした。 「え? が、楽団?」  高い高い天井の広い広い部屋には、弦楽器を携えた男女が控えており、美しい音楽を奏でているのだ。  そんな音楽の中、藍は椅子を引かれて腰かけた。  少し遅れて現れた雅貴は、すぐに藍に話しかけてくれた。 「気分はどうだ? 具合は、いいのだろうか」 「はい。もう、寒くありません」 「寒かったのか。あの蒸し暑い中で」  それはいけない、と雅貴は傍に控えていた給仕に体温計を持ってこさせた。 「いえ、熱はないと思います。大丈夫です」 「いいから、測りたまえ」  体温計が示した温度は、37℃。 「微熱、か」 「平気です」  それより、と藍は頭を下げた。 「こんなに良くしてくださって、すみません。ありがとうございます」 「礼には及ばない」  君に、興味を持った。 「それだけだ」 「興味、ですか」  あの雨の中、傘もささずに裸足で座り込んでいる少年など、生まれて初めて見た。  そんな風に、雅貴は言った。

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