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第二章・6
「僕、平さんのお役に立ててるんでしょうか」
「それはもう。ぜひ、長期滞在をお願いしたいところです」
渡辺の勧めだったが、これは当主の雅貴が決めることだろう。
藍は、軽く会釈をするにとどまった。
(変に期待しちゃ、だめだ)
これまでも、期待をしては裏切られてきた。
良いことが起きた後には、必ず悪いことがある。
灰色の学園生活で学んだことは、そんな悲しい思考だった。
「それより白沢さま、横になっておられた方が。まだ、熱があられるのでしょう」
「平気です」
「わたくしが、雅貴さまに叱られますので」
渡辺に無理やりベッドに押し込まれ、藍はすっかり病人だ。
「ディナーは、消化の良いものを、手配いたします」
「何から何まで、すみません」
茶器を片付け、渡辺は部屋を出て行った。
藍は、途端に暇になってしまった。
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