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第三章・3

 昨晩は料理のことなど話していた雅貴だったが、今夜は藍に諭すような会話をしていた。 「雨は、もう上がったよ。君の心に降る雨も、いつかは必ず上がる」 「いつ、雨はあがるんでしょうか」 「それは解らない。ただ、焦らなくてもいい」  自分のペースで走っていれば、雲もいつか晴れる。  そんな優しい雅貴の言葉に、藍の涙腺は再び緩んだ。 「君は、よく泣くね」 「すみません」 「泣きたいときには、泣いていいんだ。それが許されているのなら」 「えっ」  私は、泣かない。  いや、泣けないんだ。  平家の当主は、おいそれと泣くことを許されない。 「だから、少し君がうらやましい」 「そんな。……ごめんなさい」 「謝ることじゃない」  泣きたいことも、ないしね。  そう言って、雅貴は微笑んだ。

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